たくさんの好意-8
そして心配なのは秋山だ。暫く練習ずくめでみんな疲れているだろうと言う事で試合が終わるとこの日はお開きになった。更衣室で着替えるが、もうそこには秋山の姿はなかった。
(あいつ、大丈夫かな…)
このところずっと精彩を欠く親友を心配する。
(何を悩んでるんだ…?進学の事とかかな…?それとも何か悪い事に巻き込まれたか…)
いつも明るく馬鹿をやっている秋山からは想像出来ないぐらいの姿についつい悪い事を考えてしまう。
(あいつ、家に帰ってるかな…?いや、昔から何か嫌な事があるとゲーセンで発散してるから、きっとゲーセンだな!)
健斗はいつも秋山が立ち寄るゲームセンターへと向かう。
学校から駅方面に向かい、駅の手前を右に曲がるとそのゲーセンはある。日曜の午後と言う事で家族連れや中高生で賑わっていた。そんな中、制服姿の秋山はすぐに見つかった。少し離れた場所から様子を見てみると、何やらクレーンゲームをやっていた。
(何やってんだろ?ん…?えっ…!?おぱんちゅうさぎのぬいぐるみ!?)
まさか秋山がおぱんちゅうさぎが好きだとは思わなかった。思わず目をうたがう。
(嘘だろ…?あいつ…とうとう壊れたか…?)
いよいよ心配になった健斗だったが、少し近づいて見ると今度はフィギュアのクレーンゲーム、次はお菓子のクレーンゲームに移動して行った。
(あいつ、何がしたいんだ…??)
少し謎に思ったが、よく考えると、どうやらある女子大生風の、体にピッタリのノースリーブを着たミニスカートの女性が移動すると合わせて秋山も移動している事に気付く。そして大きな膨らみの胸や脚などを横目でチラチラ見ている事にも気付いた。
(あいつ…間違いない。クレーンゲームなんて全然取る気ねーし。)
ただ適当に手を動かしてやっているふりをしているだけで隣のエロい女子大生の体ばかり見ている。
(ん?スマホを取り出した!ヤバいぞ!)
もし盗撮が気付かれたら大問題になる。健斗は慌てて秋山の方に走って行った。
「探したぞ!秋山!」
呼ばれて慌ててスマホを引っ込めた秋山。明らかに動揺していた。
「腹減ったからメシ行こうぜー!」
健斗は女子大生に怪しまれないよう振る舞う。
「あ、ああ…」
悪い事をしていると言う自覚はあるようだ。秋山はまるで万引きをして補導されているかのように猫背になり健斗の後についてゲームセンターを後にした。