たくさんの好意-6
試合は結局1-5の完敗だった。攻めではチャンスに凡打を繰り返し、守備では後逸や暴投で失点のきっかけを作ってしまった秋山の調子の悪さがモロに出てしまった試合だった。
「あのキャッチーの人、大丈夫?健斗君の足ばっかり引っ張ってんじゃん。」
「あの人見かけ倒しねー。ガッカリだわー。」
健斗に盛り上がる傍ら、秋山へのバッシングの声も少なくなかった。だがそれを1番理解しているのは秋山本人だ。試合後、すっかり意気消沈した姿を見せていた。
「悪い…ミスばっかして…」
チームメイトに謝る秋山。すぐさま健斗が元気づける。
「気にすんなって!たかが練習試合だろ?今まで俺達は秋山に散々助けられて来たんだ。今日は逆転出来なかった俺達のチ力不足ってやつだよ。次、頑張ろうぜ!」
そう言って励ますが、やはり秋山の表情は冴えなかった。
「ゴメンな…?俺、先に上がるよ…」
秋山は肩を落としてグラウンドから去って言った。
(大丈夫かしら、秋山君…)
秋山の寂しげな背中が不思議と頭に焼きついた。
すると日菜に気付いた健斗が歩いて向かって来た。ニコッと笑い手を振る日菜。しかし隣にいる優香は心臓がバクバクし壊れそうなぐらいにドキドキしていた。
「姉貴、観に来てくれたんだ。」
照れながら帽子を取る健斗。優香をチラッと見た。
(あ、可愛い…)
明るく元気そうな、健斗がファンの今田美桜に似た可愛らしい優香にドキッとする。
「親友の優香がどうしても健斗が野球してるトコ見たいって言うから♪」
すると顔を真っ赤にして動揺する優香。
「ち、ちょっと、日菜ぁ…!」
日菜の腕を掴み揺らして恥じらう。
「ンフッ、こちら私の大親友の立花優香ちゃん。バスケしてるだよ?」
緊張する優雅に健斗も緊張する。
「は、はじめまして…、東堂健斗です…」
更に顔を赤くする優香。
「あ、はじめまして…た、立花…ゆ、優香です…」
ペコリと頭を下げる。
「せっかく観に来てくれたのに負けちゃってゴメンなさい…」
「い、いえ…。健斗君、カッコ良かったです…キャッ」
日菜の影に隠れる優香。健斗も優香も初々しく、日菜は思わず笑ってしまった。