たくさんの好意-4
「おはよー!」
健斗と別れてから間もなく、親友の立花優香と合流した日菜。
「おはよー。」
挨拶もそこそこに優香は目をキラキラさせながら日菜の腕に抱きついて甘える素ぶりを見せる。
「お姉さまぁ♪」
日菜は呆れる。
「もー、やめてよー。」
「健斗くんを私に下さい!」
「し、知らないわよ、もー…」
顔を合わせて笑うと優香は手を解き並んで歩く。
「ほんと、イケメンよねー。超カッコいい♪彼女いないんだよねー??」
「うん。今、最後の大会が近いから野球に集中してるし。」
「イケメンでエースでしょ??カッコ良すぎるわぁ♪私、応援行っちゃおうかなー。連れてってくれる?オネーサマ♪」
「い、いいけど。」
「てか今度家に遊びに行ってもいーい??」
「いいよ?」
「ホント!?じゃあ私の事紹介してくれる??名前だけでも覚えて貰おうかなって!」
「別にいいけど。」
「ホントー!?ありがとう、オネーサマ♪」
「もう、やめてよぉ、オネーサマとかぁ…」
ただ優香が1番何でも気兼ねなく話せる親友だ。波長が合う。見た目も可愛い。日菜とは対照的にバスケをしているスポーツ少女で明るく活発な美少女だ。男子からも人気がある。この2人が並んで歩くと多くの男子の視線が向く。大人しく控えめな日菜とは正反対の性格だが、何故か馬が合うのであった。
(もし健斗が優香と付き合ったら、嬉しいかも…)
姉として可愛い弟の彼女は気になる。変な女とは付き合ってもらいたくない。だが優香なら文句ないな、そう思う。
「ホントに彼女、いないんだよねー??」
「うん。まだ誰とも付き合った事、ないはず。」
「ほんとー!?じゃあキスとかもないのかなー??」
「ないんじゃない?まだ女子と話したりするの苦手みたいだから。」
「そうなのぉ…♪?」
優香の顔は様々な初めてを健斗と分かち合う妄想をしているのが明からさまにわかるものだった。そんな優香から、やはり初めての事と言うのはどんな少女にとっても大切な事なんだなと思わさせられた。好きな相手と初めてを共有出来た自分は幸せなんだなと思う傍ら、実は健斗のたくさんの初めてをすでに自分が経験してしまった事に申し訳なさを感じてしまう日菜であった。
優香のように健斗の事を聞いてくる女子は数え切れないぐらいいる。だがやっぱり優香が1番健斗に相応しい、そう思うのであった。