初めての性接待 (1)-5
『Oゆきさんの印象? えー……そうですね。もうホント、見たまんまっていうか美人で性格よくて仕事もできるしっかりさんですね』
『じっとしてると美人さんで、でも笑うと目尻がきゅっとなって可愛いんです』
『わかるー! 癒やされるよね、あの笑顔』
『あ、でもちょっと天然なとこあるよね?』
『全国放送でA社の秘書が「天然です」はまずいんじゃない?』
『言わないほうがよかった? すみません、今のはカットでお願いします! 社のイメージが……』
「ちょっと! 全然カットされてないじゃない!」
「ばっちり放映されてるわ」
「あとで局にクレーム入れましょ?」
「こちとら大口スポンサーのA社様よ」
「あれ? でも私たち、そこそこ美人に映ってない?」
「当然よ! この日のために美容院行ってメイクもばっちり決めてきたんだから」
「ふーん。クレームは勘弁してあげようかしら」
「それでやっとそこそこ止まりってのがね」
「うるさい」
ようやく三人の出番が始まったが、内容に文句をつけたり自分たちのテレビ映りを気にしたり華子と真由の騒々しさは相変わらずである。
インタビューは若手お笑いコンビによって行われ、和気あいあいとした雰囲気で続く。
『ぎゃはは。いや華子さん、ゆきさんの天然は言わんでもみんなもう知ってるで?』
『せやな。知ってる知ってる』
『だってアレやで。動画サイトの美魔女チャンネルとかもう完全に「ゆきのドジっ子チャンネル」になってますからね』
『あーー、私のオススメにもよく出てきますー!』
『ショート動画にも大量の切り抜きが溢れてる。見たことあるやろ?』
『ふふふ。ついついタップしちゃいます』
『やろ? だからええねん。今日はもっと攻めてこ。同期の仲良しグループのお姉さんたちしか知り得ない彼女の秘密をね、どんどんいっときましょ?』
『でもあかんで? ショートケーキの食べカス唇の端っこによくくっつけて歩(ある)てるとか言うたら。美魔女としてシャレにならん』
『ゆうとるやないかい』
『美魔女公式のセクシーショットのページで一人だけ免許証の写真使われてたとかもゆうたらアカン』
『もう運営に遊ばれてるやん』
『でも可愛いですよね、そういうとこも』
『免許証の写真が美人な人、はじめて見たってSNSで話題になってましたね』
『真由さん? 今あなた心の中で「ケッ」って言うてましたね?』
『あはは。そんなことないですー』
『なんやその、取ってつけたような訂正は』
『なるほど。社内女子からはあのあざとさが反感を買ってると……』
『ちょっと! 勝手に変な話作らないでくださいー!』
『でもほんと、可愛いエピソードしかないよね』
『腹立たしいわ、ケッ』
『真由!』
『おほほ。冗談ですって』
『ほんまに馴れ馴れしいお姉さん方やな。ちなみに麗美さん。その可愛いエピソードというのは?』
『えー? なんだろ……あ、そうそう! 彼女ああ見えて実はすっっっごいやきもち焼きなんですけど、それを一生懸命隠そうとするんです。でも周りにはバレバレっていう……』
『あれですか? 旦那さんと他の女性が仲良くしてると不機嫌になるとか?』
『そうですそうです。あはは……今思い出しても笑っちゃう』
『じゃあ麗美さんもゆきさんの恨みを買ったりするわけですね……?』
『彼女いい子だから恨むとかはたぶんないんです。でも遠くからジト−っとした目で見てくるのがわかりますし、私がちょっと旦那さんと長話してると間に割って入ってくるんです』
『ちなみにこういう目です』
『ぎゃははは。華子! 友だちなくすでお前、そんなことしてたら』
『社のイメージ気にしてたのはなんやってん』
『真由、お前もやぞ』
『おほほ』
『まーでもね、たしかに憎たらしいほど可愛い話じゃないですかー』
『そういうやきもちって若いうちだけかなーって昔は思ってたんですけど……いまだにありますね。そういうこと』
『それだけ旦那さんラブってことですよね?』
『あ、それは間違いないですね。ゆきってさ、なにげに惚気話多いよね?』
『多いー!』
『ケッ』
『もう腹立たしさ隠そうともしてないやん』
『このお姉さん方が一番社のイメージ損なってもうてるで』
『広報さんの許可下りるんかコレ』
『撮れ高心配なってきたわ』
『ちょっと華子、真由……どうしてくれんの?』
『まあ、じゃあ、このお二人には大人しくしといてもろてね……。一番まともそうな麗美さんにお聞きしますが……』
『はいはい、なんでも聞いて下さい!』
『お前らちゃうわ! 引っ込んどけ!』
しゃしゃり出る華子と真由を無視し、インタビューは進む。
麗美はそつのなさと程よいユーモアでさすがの対応を見せていく。