女性の美と力-1
１、嫌な思い出
私は小学生の頃所謂いじめられたことがあります。もう、何十年も昔のことですが、今でも相手の顔など全てを鮮明に覚えています。
でも今では、それは楽しい思い出として、或いは私を成長させる財産となっております。決してきれいごとを申し上げているのではありません。女性から受けた刺激がそうさせたのです。
まあ、聞いてください。
ある日、校庭の片隅で二人の悪童に相撲ごっこだか、プロレスごっこだか、ボクシングごっこだかを仕掛けられました。
それが二人増え、さらに一人増え、五人にある時は交代で、ある時は五人が一斉に。
その内に、いじめはゲーム性を帯びてきて、彼らが善玉と悪玉に分かれて、私を攻撃する役と助ける役、或いは一人が私を羽交い締めにして別の者が叩くとか、いろいろな遊びを交えてきました。
もう夕方で子供たちは少ない中、女の子たちが数人集まってきました。目を真っ赤にしている女の子やらいろいろ。
突然、「やめて！」、「お願いだからやめてちょうだい」と言う女の子の声。
「私、先生呼んでくる」と言って一人が立ち去りましたが、たまたま職員室には先生たちはいなかったとか。
その女の子は戻って来た時にはいじめは終わっていましたが、女の子たちが「あした先生に言おうね！」と。しかし、私は恥ずかしさと情けなさで返事はできません。どういうわけだか、女の子に対して恥ずかしかったのです。その場から逃げたい気持ちでした。
今にして思うに、女の子たちにまともに答えられないことで、ますます恥ずかしくなったのだと思います。それから何十年も経ち、同窓会で女の子に会いましたが、全く別の話に花が咲きました。悪童たちは一人も来ません。
２、いじめ撲滅協会へ、、、
数十年過ぎても嫌な思い出は消えません。そこで、いじめ撲滅協会なるところに相談に行きました。早速、相談員と面談。相談員も含めて全て女性です。
「それは酷い経験をなさいましたね」
「女の子たちに助けを求められないお気持ちは理解できます。親御さんには話さなかったのですか？」
「話せば親は自分のことの様に怒るでしょうね」
「それは心強いですね。ご家族はあなたの味方ですよ」「確かに家族は味方です。でも、、、」
「ゆっくり話していいですよ」と女性相談員。
「前に似たことありまして、確かに味方にはなってくれたのですが、それからは私の家族での立場が弱くなりまして、、、それからは召し使い扱いでした」
「兄弟もいたのですが、やたらと小間使い。買い物も全て私の役目」
「父からは、お前はひとより三倍努力しなさい、なんて言われる様になりました」
「まあ！家族での居場所が無くなってしまったのですね」
「よくお話下さいました。あなたのことがよく分かりました。いかがです？仮に彼らに今会ったら？」
「仕返ししたいです」
「分かりますわ。よく言って下さいました。あなたの場合、むしろその気持ちは大切です。胸にしまって大切にしましょうね」
忘れましょう、とアドバイスするのが普通ですが、むしろこの方が聞いて心が落ち着きます。
「復讐はここでは難しいですね。私どもがいいところをご紹介致しますが、いかがですか？」
「どんなどころか知りたいです」
「取り敢えず、訪ねてみれば詳しく説明してくれるはずです。民間刑務所です」
３、民間刑務所へ、、、
彼女に紹介状を書いてもらって訪問しました。
民間刑務所ってなに？行ってみると、郊外のそれはそれは大きな屋敷風、玄関は二重扉、廊下の奥はこれまた二重扉。
所長さんとの面談です。四十代半ばくらいの女性で、黒っぽいビジネススーツ。
「ようこそいらっしゃいました。私が所長の○○です。早速ですが、まずは当民間刑務所の設立の経緯と制度についてご説明申し上げますね」
「近年の公共業務の民営化にともなって、刑務所も一部民営化されました。国の刑務所とは異なり比較的に自由な扱いが認められております。そうなると、いろいろと好都合な面も多々ありますが、ここでの説明は省きますが、比較的自由な懲罰が可能だとご理解ください」
「まず、ご承知いたたいのは看守ほか全て女性によって運営しております。これは女性の活躍を願うことと、女性の持つ心の強さと肉体的な美を遺憾なく生かすためです。従って彼女たちは時には威圧的な姿、時にはセクシーな格好で囚人を取り扱います」
「次に、あなたをいじめた者をここへ収監する理由付けを見つけないといけません。私どもも努力は致しますが、あなたもご協力お願いします。ただ、五人を全て復讐の対象にするのは無理があります」