投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

《魔王のウツワ》
【コメディ 恋愛小説】

《魔王のウツワ》の最初へ 《魔王のウツワ》 12 《魔王のウツワ》 14 《魔王のウツワ》の最後へ

《魔王のウツワ・3》-1

「…本当に来るんでしょうか?」

姫野が問い掛けた。

「…遅いですよね…何かあったんじゃ…」

今日からあのバカが此所で飯を食うとか言い出したのに、昼休みが始まって、すでに30分が経過した。
俺と姫野はすでに食べ終わっている。

「…多分来るな」

だが、あのバカは面白いことに首を突っ込みたがる性質を持っている…
多分、その内…

「すまんなァ!ガガに捕まってもうてなァ。もう、大変やったわァ…」

ほらな…

ガガというのは、七之丞のクラスの担任である加賀の渾名だ。
由来は酷い濁声で、自己紹介をしたときに加賀が、ガガに聞こえたからだそうだ。
その渾名を広めた奴は言うまでもない…

「もう…ガガの野郎…ガミガミガミガミガミガミガミガミガミガミと…ああ、腹立つ!!」

七之丞はガミガミを何度も繰り返し、ポケットから煙草を取り出した。

「ストレス溜まるわァ!もう、わいの胃なんてボロボロやちゅうねん!」

銘柄はLARK。
七之丞はマッチを擦り、シュッと火を着けた。
七之丞曰く、ライターよりマッチの火で吸った方が美味いらしい。

「あっ…すまんな」

マッチの火が移った煙草を口から外すと、クシャッと手で握り潰した。
軽く焦げる音がした。

「…あ、熱くないですか?」

姫野はこんなバカにも優しい。

「別に大丈夫や。この方がカッコええやろ?何や心配してくれんのかいなァ!優しいなァ、ヒメは♪どっかの鉄面皮魔王とは大違いや♪」

矢継ぎ早に喋ると俺の方をチラッと横目で見た。

「煩い」
「あの…私…別に煙草平気です…吸わない方がいいとは思いますけど…」
「わい、女の前では吸わんて決めてるから♪」

微妙な信念を持ってやがる…

「ウゥゥゥ!」

ノワールが膝の中で唸る。余程、七之丞が嫌いなんだろう。

「落ち着け」

ノワールの喉を撫でてやる。一転してゴロゴロと気持ち良さそうに鳴いた。

「で、ヒメは魔王のコレか?」

七之丞はピンッと小指を立てた。

「えっ…あ、あの…わ、私と…う、鬱輪さんは…その…」

姫野は少し頬を染めながら、あたふたとし始めた。


《魔王のウツワ》の最初へ 《魔王のウツワ》 12 《魔王のウツワ》 14 《魔王のウツワ》の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前