《魔王のウツワ・3》-8
「…何のことや?」
だが、それもすぐにいつもと同じに戻った。
「じゃあな」
話を打ち切り、俺は七之丞と別れ、自分の家へと歩いていった。
※※※
「何や…気付いとったんか…」
道端で一人ごちる七之丞。軽く腕を揺らすと何かが手の中に落ちてきた。
すかさずそれを握り、さらに腕を振る。
仄暗い街灯の下、鈍色の刃が踊った。銃刀法違反に引っ掛かりそうな折り畳み式ナイフ。
「ん〜、わいも鈍ったんかなァ…」
パチリと刃を折り畳むと今度は煙草を取り出し、口に咥える。
ポケットに煙草を入れると同時に、マッチを取り出した。
箱からマッチを一本抜き、壁で擦ると先端に火が灯る。その火を煙草に移すと、大きく吸い込んでいく。
フゥーと一息。紫煙が闇に溶け込む。
「しかしまあ…流石、魔王やな♪目敏いとゆーか、何とゆーか…」
煙草を咥えたまま口許をくつくつと歪める。
「でも、なんやかんやゆーても、親友やしな♪魔王なりの親切やと思っといたるわ♪」
薄闇の中、七之丞の独り言が響いた。
続く…