《魔王のウツワ・3》-2
「変に勘繰るな」
バカは早めに切り捨てないと煩い。
「何や違うんかいな!ようやく魔王の冬が終わったかと思たのに…鬱輪、ええ娘紹介したろか?………すまん、そんな物好きおらへんわ♪」
切り捨てても煩い…
「知っとるか?この魔王様、中1ん時に初恋相手に告白しようとしたら、命乞いされたんやで♪」
「…黙れ」
七之丞を一睨みする。
バカは人の傷口にハバネロを塗り込むのが好きだ…
「…や、やめてぇな…ほんまに怖いから…ほら、鬱輪…笑ろた方がええで…ヒメの前やで…」
こんな時だけ眼光が役立つ…
正直、うれしくない…
「仲いいんですね」
「親友やからな♪」
「…腐れ縁だ」
コレが唯一の友だと思うと泣けてくる…
「そや!ヒメ、今日の帰り暇か?」
七之丞は唐突に切り出した。
「ええっと…大丈夫ですけど…」
「鬱輪は聞くまでもないな♪暇やろ?」
コイツに言われると癪だが…残念ながら俺はいつも暇だ。
「…何が言いたい?」
「ヒメとの親睦会を開こ思てんねん。それで、ええもんがあるんやけど…どや?」
そう言われても…
「…変なもんじゃないだろうな?」
コイツの情報網と裏の付き合いは底が知れない。
「心配せんでもええ。好きなもんが『愛と平和』のわいがヒメを変なとこ連れてくかいな!」
『金と女』が好きなお前が何をいけしゃあしゃあと…
「まあ、とりあえず見せたるわ」
そう言うとポケットの中を探り、一枚の細長い紙切れを取り出した。
「ぱらぱらっぱぱ〜♪カラオケの一時間無料券〜♪」
未来猫型青狸機械を真似て取り出した物は近くのカラオケ屋の無料券だった。
「どや?行かんか?」
ピラピラと無料券を振り、その糸目をさらに細める。
「…あの…その…」
姫野は困惑している様だ。当たり前だろう…
昨日今日、初めて会った奴等と何が楽しくてカラオケに行かなければならないのか。