回送列車-1
隆はクリトリスへの責めを毎日続けた。美伯のはしたないピンク色の豆は日に日に浅ましい悦びを肉体に刻み込んでいく手助けを惜しまなかった。
自分の体の一部であるのに、自制ができないことが何よりも悔しい。
「やめてっ!やめてェっ!!」
美伯は泣きむせび、狂わんばかりに頭を振ることでしか抗えない自分が情けなかった。どんなに頑張っても、最後は必ず達してしまう穴が恨めしかった。
しかも牝の部分は確実に記憶を重ね、そしてもっともっとと更なる責めすら望んでいるのだ。
(怖い……!)
4日が過ぎた頃、美伯は絶頂に恐怖を覚えるようになった。自制できないのではなく、隆にイかされる肉なのだという自覚がそうさせていた。
「いやっ、許して…っ」
初めての、女の懇願は、隆に侵入された時より遥かに屈辱的だった。レイプと違って強制的な侵入ではない。自らの汚らわしい欲望が美伯の大切な内面を蝕み、侵していく事に耐え切れず発した敗北の訴え。
イく度に自分の大切な箇所が欠けていく。あと何回で完全に崩壊してしまうのかと、美伯は涙ぐむ。目の前の憎い男にはその期限が見えているのだろうか。怖ろしくてたまらない。
「お、お願いだから。あなたの言う通りにする。
隆の…肉、便器に、なる…から。さ、逆らわずにいつでもお尻を、出すから…だからもう、これ以上、やめて…お願いします」
崩壊だけは避けたかった。自分の“女”をなんとしても守りたい、そう考えた末の切ない願いだった。
「だめだ」
「な、なぜよ…あなたの性奴隷になる、それが望みでしょ?」
言葉の裏にある拙い謀を見透かしたように肩頬を持ち上げる隆に、背筋が凍る。
「肉便器だの性奴だの、下らない事を言うな。お前は俺の変態チンポ用穴玩具になるんだ。
嫌だと言っても無駄だぞ、お前のマゾの素質を俺の痴漢指導でしっかり育ててやる」
あまりに身勝手で常軌を逸した物言いに、美伯は全身の血が怒りに滾るのをどうにもできなかった。
「馬鹿も大概にして!!何が素質よ、そんなものあんたの色狂いが見せる妄想よ!ケダモノッ!悪魔っ!死ね!」
感情にまかせて悪態をついたが悔いはなかった。どうせこのまま壊されてしまうなら、言えるだけの事は言っておきたい。
それを言い納めに牝に堕とされるなら自ら理性を手放してやろう、そう肚を決めた。
「自分はマゾじゃないと、まだ信じてるのか?」
「フン、女の弱点を煽り立ててムリヤリ絶頂させているだけのくせに、私をモノにした気でいたの?哀れな男ね」
無垢な乙女でもあるまいし、と美伯は鼻で嗤った。ここからはせいぜい肉の狂宴を娯しむ事にしよう。肚を括ってしまえば、なんという事はない。
どんな痴態を晒したところで見ているのは隆だけだ。こんなつまらないレイプ魔に見られたからといって何が問題だろう。
たとえ写真や映像が撮られたとしていても美伯にはなんの脅威でもなかった。解放されたら出るところに出る、その際の良い証拠になるだけだ。
公開を脅迫されたら海外にでも留学し、そのまま就職してもいい。日本に留まる事に拘らなければ何も恐れることはない。
それだけのものを積み上げてきた自負があった。
(あんたみたいなつまらない男とは違うのよ)
蔑みの目を向け、「どうしたの?いつもの遊びを始めないの?」と腰を揺すってみせながら嘲笑う。
気分が良かった。
もし逆上され、凶事に及ばれたとしても相手を圧倒したまま逝くなら、それは勝利だ。
私は隆に克った、そう思った。