杏奈の気持ち 〜 秋陽 〜 杏奈と健-7
それが功を奏し始めたのは、健が高校1年の秋になってからでした。
健は大きくタイムを縮めるようになり、主力メンバーに選出されるようになり、レースでは入賞することも珍しくなくなっていたのです。
1年生が2年生3年生を追い、追いつき、引き離して行く。
引退していく先輩たちに囲まれ、「後は頼むぞ!」と頭を撫でられている健が誇らしく思えました。
もうアタシの中では理想の男性像以外の何者でもありませんでした。
健を見る度にドキドキして、顔が赤らんでいるのが自分でもわかりました。
アタシも高校3年生。
大学への進学は一番難しいとされる国立を目指す事に決めていました。
アタシも誰かに何かを伝えられる人間になりたい。
健が身をもって証明した、強くなれると信じて努力をしてみたい。
毎夜続いた健の追っかけを断ち切り、アタシは全力で受験に取り組みました。
誰かに何かを伝えたい。
そんな思いから教育学部を選びました。
人生イチ勉強したと自負してます。
アタシはストレートで合格することが出来ました。
大学へと進むと、またアタシはバイトに復帰し、健の追っかけも再開していました。
健は高校2年生でほぼ部の中心にいました。
どんなに小さな大会でも手を抜くことはなく、3年生に混じって入賞するのも珍しいことではなくなっていました。
夜の練習では、運動公園での走り込みはより繊細に筋肉を解す体操も取り入れ、その内容が濃くなっていくのを感じていました。
健の身体は全てが無駄のない筋肉だけになり、その姿を見ているだけでも、アタシは苦しくなるほど胸を締め付けられていました。
次第にアタシは健に振り向いて欲しい。アタシを見て欲しいと思うようになっていったのです。
健はその頃になると、夜のキツイ練習でもあまり疲れが残らなくなり、普通に練習から帰って来て、お風呂に入り、部屋で音楽を楽しむ余裕すら出るようになっていました。
お気に入りの曲は、意外にもクラッシックで、健の部屋からは、ボレロやクラッシックギターの曲が聞こえて来るようになりました。
かといって音響に拘ることはなく、音源はスマホからでした。
健、こんな曲聴いて、心を落ち着けているのかな?と想像すると、それだけでドキドキが止まらなくなりました。
アタシは健にアタシを見て欲しい一心で、部屋では恋愛モノのテレビドラマを見たりして、女優さんが恋愛対象にするような仕草を一生懸命真似るようにしていました。
食事時に健がリビングへ降りて来ると、意識してそういう仕草を真似てしてみたり、何もない時に咳払いをして注意を引いてみたりと、ありとあらゆる手段でアプローチを試みました。
着る物も少し肌が露出するような物を選び、肩やおヘソがチラチラと見える物をチョイスするようになりました。
でも、健がアタシを見ることはほとんどなかったのです。
アタシには女としての魅力がないのだろうか?
健はアタシを女として見てくれてないのだろうか?
そもそも健は女性に興味がないのではないか?
そんな気持ちがアタシを落ち込ませました。
そんなある日です。
いつものように夜練から健が帰ってきて、お風呂に入って、部屋へと帰ってきた音が聞こえて来ました。
いつもの音楽が聞こえて来ないな、と耳を澄ませていたら、聞き慣れないガタガタ、ゴトゴトという音が小さく聞こえて来たんです。
何か探しものでもしているのかな?と、壁際に寄り、耳を澄ませていました。
カタカタカタと規則正しい音とベッドのギシギシギシという軋み音が聞こえて来て、それが4〜5分続くと、「ウッ!」という健の声が聞こえて来たんです。
「えっ?!」
思わず声が出そうになるのを、口に手を当て、堪えました。
健···もしかしてオナニーしてる?
アタシは壁際にヘナヘナと座り込み、自分の身体が熱くなるのを感じていました。
「はぁ〜っ··」と大きく息をつく健の声が聞こえてきて、間違いない。健、今、オナニーしてた。
そう思うと、健が自分のそそり勃つモノをシゴイている姿を想像して、アタシは自分の右手が下半身へ伸びているのに気づきました。
無意識で股間を触っていたのです。
股間を指で撫でると、何だか堪らなく気持ち良くて、履いていたホットパンツの上から撫でていた手は、どんどん力が入っていきました。
もう自分では制御できないほどになっていました。
ホットパンツの上からだけでは満足出来ず、アタシはホットパンツとショーツをずらし、直接性器を触り始めました。
アタシ、濡れてる。
性器の筋に指を添わせた瞬間に気づきました。
指がアタシの中から溢れ出たモノで、ヌルッとした感触を得ていました。
そのヌルヌルで指を動かすと、軽く電流が流るような気持ち良さがアタシの中を駆け巡ります。
思わず目を閉じてその動きを続けていました。
筋に沿って人差し指と中指を添わせ、縦にゆっくりと押さえるようにして上下させると、身体がビクビクと震えるほどの気持ち良さが訪れました。
この液体はどこから溢れているのだろう?