杏奈の気持ち 〜 秋陽 〜 杏奈と健-56
アタシは少し恥ずかしくなりました。
「そんな前から気づいてたんだ。」
「私はね。杏奈が健の相手なら、申し分ないと思ってた。たぶん、お父さんもね。姉弟なんていっても、元々血の繋がりもないんだから、全く気にならなかったし、2歳差のカップルなんてどこにでもいるじゃない。
姉さん女房は頭下げてでも貰え、なんて言葉もあるくらいなんだから、ってお父さんも言ってたしね。
杏奈も健も真剣だ、っていうのは見えてたから。
だからお父さんも黙って見てよう、って言ってたんだと思う。
変に協力するのも違うと思ったしね。」
アタシはお母さんのその言葉を聞いて、お母さんがお母さんで良かったって再び思えた。
「お母さんがアタシのお母さんで良かった。」
そう口から溢れた。
「私も。杏奈が私の娘で良かった。引き合わせてくれたのがお父さんで、本当に良かった。お父さんは私にいろんな幸せを与えてくれた。杏奈も私にたくさんの幸せを感じさせてくれた。健も含めて、本当の家族だと思わせてくれる。こんな幸せ、どこにもないよ。」
お母さんは大粒の涙を浮かべ、強くアタシを抱きしめてくれました。
アタシはそれ以上言葉が出なくて、つられるように涙を流しながらお母さんに寄り添っていました。
柔らかな陽射しがアタシたちを包み、湧き上がる温かい気持ちと一緒にアタシたちを温めてくれていました。