杏奈の気持ち 〜 秋陽 〜 杏奈と健-34
幼い頃、アタシが健にしてあげていたように、アタシは健にシャワーでお湯を浴びせ、アタシも少し浴び、身体を温めてから、ボディソープを手に取り、柔らかく掌で健の身体を洗ってあげました。
健がいつも使っているシャンプーで頭も丁寧に洗うと、健もボディソープを手にアタシの身体を洗ってくれました。
健はアタシの背後から洗ってくれるのですが、ふいに健の手が後ろからアタシの乳房へと回り、それから少しエロい感じで乳房を撫で回します。
急にエロい動きになった事で、アタシの乳首は反応するかのように固くなっていました。
健はさらにその固くなった乳首摘みながら刺激してきます。
思わず少し声が出てしまうほどです。
「ん、もう。そんな事したら我慢できなくなっちゃうよぉ」
アタシがそう健に言うと、健はすぐに「ゴメン、ゴメン。つい···」と言って、手を他へと回し始めました。
ちょっと勿体なかったかな?と思いながら、アタシはその身を健に任せていたのです。
健はアタシの足の指先まで綺麗に洗ってくれ、いつもアタシが使っている美容シャンプーで髪の毛まで丁寧に洗ってくれました。
初めてのことで健も慣れてはいないのに、一生懸命丁寧にしてくれているのが伝わってきて、アタシは感無量でした。
二人が泡だらけで向かい合っているのにも、なんとなく感動してしまって、ずっとこの時間が続けばいいのに、と思ってしまうほどでした。
でも、そういう訳にもいかず、アタシはシャワーを手に二人についた泡を流し始めました。
健についていた泡が流れ落ちていくと、なんだかとても切なく思えます。
アタシについていた泡を流し終わると、ああ、終わっちゃったと、ひとつの儀式が終わったような切ない気持ちになりました。
アタシが健の肩へ手を添えると、健は湯船に入りました。
健が腰を降ろした所へ、アタシも湯船に浸かります。
健と密着したくて、アタシは健に背を向けて、健の胸にアタシの背中を預けました。
健はそんなアタシを背中ごしに軽く抱きしめてくれました。
まるで大きな健の胸の中にすっぽりと私が入ってしまう錯覚を覚え、アタシは健に全てが包まれているような心地良さを感じていました。
さっきの切なさは何だったんだろうと思えるほど、温かで優しい気持ちに溢れていました。
「姉ちゃんてホント肌綺麗だよね。白くてモチモチしてて、スベスベで。僕なんか真っ黒で陸上焼けしてガサガサだし、こうやって比べるとヤバいよね。」
健が先に口を開きました。
「そお?男と女で肌質は違うだろうけど、健の肌ってサラサラで、筋肉質で、デコボコしたとこなんか、野性的でカッコいいと思うけどな。」
アタシは健がこれまでスゴく努力を積み重ね、毎日の積み重ねでここまで逞しくなったのをこの目で見てきているので、素直な気持ちで健を褒め称えました。
それと同時に健がアタシの肌に興味を示してくれたのがとても嬉しかったのです。
「健が陸上やりたいって言い始めた時、続くのかな?って心配したけど、健ったら、そっから急に成長していくみたいにどんどん強くなっていって、アタシ、少し寂しかった。
もうアタシの出る幕はないのかな?って。
でもね。大会とか出て記録残すようになると、ホント、カッコいいって思ったの。その辺りかな。健を異性として意識しはじめたの··」
自然に口から出た言葉でした。
アタシはアタシの全てを知って欲しいと思う気持ちに溢れていました。
「そうだったんだ。全然気がつかなかった。」
健はそう言いましたが、アタシはずっと健だけを見ていたんだよ、って知って欲しかった。
「健、中学3年生の時に、部の威信をかけたレースあったでしょ?
あの時に後輩たち引き連れて、絶対勝つぞ!って輪の中心にいて、後輩たちを鼓舞してた。
あの姿見て、ホント、カッコいいって思ったの。宣言通り健がアンカーで1位でゴールテープ切った時なんか、感動して、涙止まらなかったもん。
誰にでも誇れる弟、って気持ちと、カッコいい理想の男性像みたいなのが合わさって、苦しいくらい好きになった。」
そういうと、健の手がピクッて動きました。アタシは自分の言葉に反応してくれたような気がして、自然に健の手に指を絡ませるようにして握りしめました。
健もそれに反応して握り返してくれました。
「だからアタシ、高校の時って、健しか見えてなかったよ。」
そういって振り返ると、健は優しく口吻てくれました。
それはチュッと音が出るような軽いものだったけど、健のアタシへの想いが伝わってくる温かいものでした。
「健、高校入ってからも陸上続けてくれて、何度も大会出ては記録伸ばしてた。何かに一生懸命になるって、スゴいな、っていつも思ってたよ。
大会前なんて、限界ギリギリまで自分を追い込んでる感あって、心配だったけど、頑張れ!っていつも応援してた。
健はそれに応えるように記録伸ばしていくから、アタシ、どんどん健しか見えなくなってって···」
想いが溢れ出て来て、アタシは思わず言葉に詰まってしまいました。
「大会、来てくれてたんだ。」
健は言葉に詰まって困っているアタシを気遣うように聞いてくれました。
「うん。全部見てた。
中学ん時の同級生にLINEして、その子の妹とか弟に探ってもらって···」
「健がアタシにいつも勇気をくれたから。」
健は「そうだったんだ···」と聞こえるかきこえないかのような声でアタシに呟きました。