杏奈の気持ち 〜 秋陽 〜 杏奈と健-13
お風呂場に設置された洗面台の前でも健は状況が理解できていない表情だったので、アタシは健の上半身を隠していたジャージを剥ぎ取り、背中を押してお風呂場へと突っ込みました。
アタシもササッと着ていた衣類を脱ぎ捨て、洗面台に置いてあったクリップを使って、クルクルっと髪の毛を巻き上げ、そのクリップで止めて、健の待つお風呂場へと入って行きました。
お風呂場へ入ると、健はただ呆然と立ち尽くしていました。
「シャワー浴びないの?」
アタシが聞くと
「い、いや、浴びる···けど。」
やっと喋ってくれた。
なんだか嬉しくなった。
「後ろ向いてごらん。流してあげる。」
アタシは昔、小さい頃に健にしてあげていたようにシャワーを浴びせ、掌で柔らかく汗を流していました。
一通り背中を流し終えると、「はい。前向いて。」と言うと
「前は自分で出来るから。」
と健は拒否反応を示してきました。
なんだか可愛い♪と思ったけれど、ここは譲れないとばかりに
「いいから言う通りにしなさい。アタシが汚しちゃったんだからアタシが洗うの!」
少し強く語気を荒げてしまった。
健は渋々と前を向いた。
ウフ♪やっぱり可愛い♪
アタシは首筋から胸、お腹までシャワーを浴びせながら汗を流し、さっき射精に至ってしまった健の大事なところをボディソープを使って丁寧に洗った。
それは射精に至ったことでまた少し小さくなっていたけれど、プニプニ、モチモチとした感触は、アタシを大いに癒しました。
「なんか可愛い。この感触、スゴいよね。なんだろ?モチモチっていうか、プニプニっていうか、こういう感触のモノって、他にないなあ〜。」
ついつい口に出てしまう。
健はその姿を見下ろしながら
「姉ちゃんは初めてじゃないの?」
そう聞いてきた。
「セックス?」
そう聞き返すと
「うん。さっき姉ちゃん、初めてだと元気いいとか言ってたから。」
嘘は嫌でした。
でも少なくとも健がアタシに興味を示しているという事が嬉しくて、少し笑顔になれました。
「一応経験者かな?」
思い出したくもない悲惨な経験だったけど、健には嘘をつきたくありませんでした。
「一応?」
健が不思議そうに首を傾げていたのでアタシは正直になろうと思いました。
「つい最近ね。大学のコンパで知り合った人としてみたんだ。なんか優しそうでいいかな〜って雰囲気になったんで、委ねてみたの。でも、なんか思ってたのとチゲくて···痛いばっかだったし、相手も自分本位でさ···」
忌まわしい記憶でしたが、健に話せば気持ちも楽になるような気がしました。
健はスゴくビックリした顔をして、そして困ったような表情になりました。
いくらなんでも話が重かったかな?と少し後悔しましたが、もう後へは戻れません。
すると何かに気づいたような顔をして、健が聞いてきました。
「えっ?ならなんで今こんなことになってるの?」
まあ、当然の反応よね。
アタシが一方的に健を犯してるのと一緒だもん。
ゴメンね。健。
そんな気持ちもありましたが、ここは戯けてみせて切り抜けるしかないと思いました。
「え?なんで、って、健となら気持ち良くなれるかな?って思ったに決まってんじゃん。」
そう笑って見せましたが、健は更に驚いた表情になります。
もう切り札を出すしかないと思いました。
「それに健、アタシをオカズによくオナニーしてるし。」
健は少し後退りをするほど驚いていました。
「し、知ってたの?」
その表情は今まで見た事がないほど狼狽え、ちょっと可愛そうにも思えました。
「知ってるに決まってるじゃん。うっすいボード一枚で区切られた部屋に隣同士でいるんだよ。何してるかなんて丸わかりじゃん」
「それに···持ってったショーツって、アタシけっこうお気に入りのヤツだったんだよね」
最近、健がたまにアタシの部屋へ入って物色していたのは薄々気づいていました。
でも何かがなくなるというのはいつもなくて、なんか物を置いてあった配置が変わってる?
アレ?このコート、左端にかけてあったのに、右の端に変わってる···程度のものでした。
ただ、この最近、健が部活を引退してからはお気に入りのショーツが昨日はあったのに消えていて、もしかしたら健?と疑いはあったのです。
「まあ、健だから仕方ないか。」
アタシは本当に健ならいいと思っていました。
それは健のアタシに対する想いからした事だと思えたからです。
「それにアタシだってそれをオカズにしてたしね。」
アタシは健がオナニーしていた事実を知り、健がオナニーするのを肌で感じながら、自分もオナニーをしていた事を素直に打ち明けました。
「え?!姉ちゃんもオナニーするの?」
健にとっては刺激が強すぎたようでした。
「そりぁするわよ〜。健全な性知識をもった人間なら誰だってするんじゃない?」
「それとも世の清楚な女性はオナニーなんてしないとか妄想してる?」
もしかしたら男性が女性に抱いているイメージを崩すのかもしれないと思いながら、でも、事実だから。というのと、健には正直でいたいと思う二つの思いからありのままを伝えたつもりでした。
アタシは作り笑いで答えるしかありませんでした。
「いや、そんなことは思ってないけど···」
健の表情は明らかに曇って見えました。
何か話題を変えなきゃ、そう思いました。