杏奈の気持ち 〜 秋陽 〜 杏奈と健-11
そして運命の日は訪れました。
アタシは朝の5時半には目が覚めていました。
これは別に目覚ましをかけていたのでもなんでもありません。
遠足を楽しみにしている幼児のような気分で目覚めました。
時計を見て、まだ5時半か···とも思いましたが、ワクワクが強すぎて、二度寝する気にはならなかったのです。
とりあえずトイレに、と一階へと降りて行くと、お母さんと鉢合わせました。
「あら、杏奈。早いわね。もしかして、アレ? 始まっちゃった?」
お母さんが心配そうに聞いてきました。
アレとは生理のことです。
「ううん。違うよ。なんか知らないけど、目、覚めちゃったから。」
そう言ってやり過ごし、トイレへ入って用を足しました。
トイレから出ると、お母さんとお父さんは早めの朝食を取っていました。
7時の新幹線に乗るため、6時には家を出なければならないからです。
お父さんはパンにサラダにコーヒー。
お母さんはパンにサラダにトマトジュース。
親子で好みって似るんだな、って、ちょっと可笑しくなったけど、それは黙っていました。
そうこうしていると、お母さんもお父さんも靴を履いて、そそくさと出て行きます。
「杏奈、悪いけど頼むな。」
そうお父さんは言って、お母さんと出て行きました。
アタシは
ついに来た!
この瞬間が!
これから明日のお昼まで、アタシと健は二人っきり!
好き同士の二人が同じ屋根の下で二人っきり!
何も起こらないはずがないじゃない!
絶対、アタシが健を振り向かせてみせる!
異様なテンションでした。
「遅い···」
時計は11時を指そうとしていました。
アタシは待ちくたびれ、ソファーの上で膝を折り、その膝を抱き抱えて、膝の上に顎を乗せて身体を横に揺らしてました。
勉強?
寝てるのかしら?
最近、詰めるように勉強してるみたいだったけど···
てか、受験勉強一生懸命してる健を襲うのって、ヤッパいけない事なのかな?
いろんな考えが頭の中を巡ります。
そんなことを考えてたら、二階からドアの閉まる音がして、健が降りて来ました。
健は階段を降りると、そのままトイレへ。
そしてトイレから出ると、リビングへと入って来ました。
「健。おはよう。今朝はゆっくりだね。」
アタシは出来るだけの笑顔で挨拶しました。
「ん。おはよ。父さん母さんはもう行った?」
健は気だるそうにTシャツの裾から手を入れ、胸の辺りをポリポリとかいていました。
見事に割れた腹筋が顔を覗かせ、アタシの目の前に来ます。
ああ···スゴい···逞しい。
「うん。6時には出て行ったよ。」
アタシは何事もないように取り繕い、返事をします。
「姉ちゃん、何も用事とかないの?」
健の質問の意図がわからなくて
「え?何で?」
と聞き直しました。
「だってさ、年頃の女が休みに家でゴロゴロはおかしくない?デートする相手とかいないの?」
それはアナタ、健だよ!
アタシは健と一緒に居たいの!
なんでそんなこと言うの?!
心の中で叫んでいました。
「ん〜···言い寄ってくる人はいなくはないけどね。良い人って少なくて。」
そう返事するのが精一杯でした。
健は一度大きく手を上に伸ばし、あくびをしました。
「まあ、姉ちゃんなら寄鳥味鳥だよね。でも、吟味出来るのも今の内だよ。オバサンになっちゃったら、それも出来なくなるから、早めにいいのいたら捕まえたほうが良くない?」
健···
なんでそんなこと言うの?
アタシ、こんなに苦しくなるほどアナタが好きなのに。
ヒドいよ。
健。
酷すぎる···
アタシは自分で気がつかない内に立ち上がっていました。
そして健の立っている前へとに回り込み、咄嗟に健を突き飛ばしていました。
急に突き飛ばされた健は、ソファーに後ろから座り込むように倒れ、目をまん丸にしていました。
違う!
こうじゃない!
アタシが健にしてあげたかったのはこうじゃない!
でも、もう止まりませんでした。
「健も大人になったよね。ね、私の事、いつもいやらしい目で見てるでしょ?女の子のこと、教えてあげようか?」
アタシはそう言うと、健の短パンに手をかけ、履いていたパンツごとずり下げてしまいました。
健は一瞬固まったようにさらに目を大きく開き、驚いていました。
瞬間、身を捩り、足元を閉じようとします。
もう引き返せない。
覚悟を決めなきゃ!
アタシはそう気持ちを奮い立たせます。
「ちょっとぉ〜ジッとしててよぉ〜。よく見えないでしょ?」
足首に引っかかっていた短パンとパンツを無理矢理剥ぎ取ってポイッとソファー投げ、アタシは健の両足を拡げるように力を込めました。
一瞬、ロストヴァージンの時に押し付けられたドス黒いモノが頭をよぎりましたが、予想に反して、健のモノは、鮮やかなピンクの艶のある、とても可愛いモノでした。
それはテロンと下を向き、可愛く垂れ下がっていました。
「可愛い♪」
小さい頃に一緒にお風呂に入っていた時の印象より幾ばくか大きくなって、その時は皮に包まれていた記憶があったのですが、先っぽには皮がなく、ツルンとした松茸を思わせるフォルムでした。
意識も何もなく、アタシの手がのびていきました。