攻勢な性交-8
「ふぅ‥‥本当に気持ちよかった。ね、先生も気持ちよかったでしょ?」
総一は京子に尋ねる。女体育教師は床に寝た姿勢のままだった。
「あ、あぁ‥‥」
京子は起きたばかりのような寝ぼけ眼で頷く。そんな様子を見て、総一の中で悪戯心が生まれる。
「正直、天上寺とセックスした時よりも気持ちよかったでしょ?」
「うん。できればもう1回したい‥‥って、何を言わせるんだ北森!」
床から起き上がるなり、ポカっと軽く頭を小突かれる。中々のツッコミだった。痛みはないが顔はとろけ顔からすっかりいつもの京子に戻っていた。
「コホン‥‥!今日は合意だった。それでいいだろ?」
京子はその場で立ち上がると、咳払いして大人な対応をする。
「あ、はい」
総一も頷くと、同じように床から立ち上がる。
「でも、私たちの関係を誰かに言いふらしたりはするなよ?いくら今日のは合意だったとはいえ、先生と生徒の関係は問題だからな」
「もちろんです。先生が信じてくれるなら俺は全力でそれに応えますよ」
「そうだな。もし喋ればその時点で終了だからな」
「じゃあ先生。話もまとまったところでキスしましょうよ」
行為中にはできなかった口づけ。それをねだると、京子は一瞬、顔を近づける素振りを見せた。が、途中でハッとして止めた。
「うっ‥‥だ、駄目だ!さっきは流されたが私は永介の許婚なんだ!キスは駄目だ!」
「むぅ‥‥」
総一は強情っぱりな京子に少しだけイラッとした。それは京子に対して、というよりはあれだけ喘いでいたのにも関わらず、冷静さを取り戻せば永介を優先するという、彼女の心の中での許婚の相手の大きさを改めて実感したためだ。
「あの先生――」
「あん?」
キスしましょう、ともう一度言ってみたかったが、先手を打たれ京子にギロッと睨まれてしまい、それ以上は言えなかった。
「(まあでも、今回はセックスできた訳だし。これからだってチャンスあるよな)」
にひひ、と総一は下卑た笑みを浮かべた。
「こんな、セックスでイッたことなかったのに‥‥」
総一が笑みを浮かべている間に、京子は背を向けボソッと呟く。
「(ということは俺が初めてイカせたってことか?)」
雲の上の存在である天上寺に勝った。ちょっとした優越感だった。
「あぁ‥‥でも私教え子と一線超えてしまったんだな。許婚の相手がいるのに‥‥」
肩を落とす京子に、総一はそっと肩を寄せて側に寄り添う。
「大丈夫ですよ先生。俺、ちゃんと黙ってますから」
「き、北森‥‥そうだな。お前のことは信じているぞ」
「はい」
京子から向けられた信頼感。総一は胸の奥がカーッと熱くなる。
しかし、そんな心とは裏腹に僅かながら満足感はまだない。今のままでは及第点というところで、もうひと押し欲しかった。
それは自分の分身である淫棒も同じだったようだ。総一が意識して気がつけばもう一度セックスできる状態までにムクムクっと勃起して復活していた。総一は自分的には性行為自体に満足したつもりだったが、身体の方はまだしたりないようだのだ。
「あ‥‥」
「どうしたんだ?‥‥えっ!?」
総一の間の抜けた声に、床に脱ぎ捨てた下着やインナー等を拾い上げようとして京子は気づいた。総一の男性器がまた勃起していることに。
「な、何でまた勃起してるんだお前!?」
京子は驚いた様子で総一の淫棒を指差す。総一の男性器は、先ほどのようにセックスできる状態までそそり立っていた。
「いえ、また興奮しちゃったみたいで」
てへへ、と総一は茶目っ気に笑って後頭部を手で掻くと、一つの提案をする。
「まだ俺も余裕があって予備のゴムもありますし、もし良かったら第二ラウンドなんてどうです?」
「なっ‥‥!?私とまたセックスしたいのか!?」
「はい。だって、今日は合意なんですよね?それに、確か先生ももう1回くらいしたいって言ってましたよね?」
「ぐっ!?」
総一が発言を指摘すると、京子は言葉に詰まる。
「ね?またセックスしましょ?」
「‥‥‥‥」
総一からの催促に、京子はしばし無言になると恥ずかしそうに目を伏せ、数秒後には無言で頷く。素直な態度に総一が思わず笑みを浮かべると、京子は釘を刺すように言い放つ。
「‥‥ただし!キスは駄目だからな?」
「はい♪」
空き教室に居る生徒と教師。一組の男と女。第二ラウンドが静かに始まりを告げようとしていた。