投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

25歳
【大人 恋愛小説】

25歳の最初へ 25歳 2 25歳 4 25歳の最後へ

25歳-3

「悪い、飛行機遅れちまった」

「…遅い…」



ぐいと引き寄せられた体。

耳元でもう一回「悪い」と繰り返した章吾の低い声にゾクリと何かが背筋を走っていく。




「いやだ!離して!」



諦めようとしていたの。

もう次の一歩を踏み出そうとしていたの。

切なくて、苦しくて。



「離さねぇ」



腕の中でバタバタと暴れても、いっそう強く抱きしめられるだけで。

力強い腕とその言葉にぐったりとうなだれた。

瞬間に耳元で囁かれた、言葉。



「好きだ」



涙が溢れた。

どうしようもなかった。

もう、止められない。

自分の気持ちに逆らうことなんて、もう出来はしなかった。



手が震える。

でも抱き返したい。

抱き締めたい。

この人が、愛しいから。



「…もうっ、来ない、か、とっ…」



必死で紡いだ言葉は途切れてしまったけれども。

きっときっと伝わった筈。


25歳の最初へ 25歳 2 25歳 4 25歳の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前