女教師、同性後輩へ手ほどき-8
清香を見ながら、由美香は肘をついて、手のひらの上に顎を乗せる。
「気まずい? 今日出勤してからよそよそしいけど」
眼鏡越しの由美香の視線を感じるが、清香は顔を上げることができない。
視線を逸らしつつ、清香はマグカップを手に取り、熱いままのコーヒーに口をつけた。
もちろんすぐさま飲めるはずがないのだが、はっきりと言われてしまったことに戸惑ったからだった。
「何も悪いこと、清香ちゃんはしてないからね? ずるいことしてるの、あたしなんだって自覚、きちんとあるよ」
「そんな……」
ようやく顔を上げて、清香は首を振る。
「いい歳の女が男にフラれて、十個も年下の若い子に好かれてるのがわかった途端調子乗ってるだけ。清香ちゃんは何も悪くないし、昨日のこと、嫌だと思ってないよ。でも、あたしにこういう一面があるってことには幻滅してる」
髪の毛をかきあげて、由美香は苦笑いをする。
「先生、それは違います。あたしたちが我慢できなかったのが悪いんです。先生はただ、この状況がどうしようもないから諦めて、受け入れただけだと思います。でもただ……少なくともあたしは、昨日のこと、嬉しかったです」
清香の目から涙がこぼれ落ちそうになっている。
話していて、やっと飲める温度になったコーヒーに、清香は再び口をつけた。
一呼吸置こうと思ったのに、ぐすっと鼻をすすり、唇を震わせてしまう。
「ーーわかった。職場では後輩として付き合うし、プライベートでは今まで通りに遊ぶ。……あたし、ずるいままでいるよ」
由美香はコーヒーに口をつけてマグカップを置くと、清香の表情を見て切なそうな顔をした。