特進クラスの期末考査 『淫らな実験をレポートせよ』act.3-6
二人はワイシャツやTシャツ等をプールサイドに干し、飛び込み台の上に腰を下ろしていた。
「ばーか。服着たまま飛び込むなんてアホだな」
「テメェが蹴り落としたんだろうがッ」
太刀川は、そうだっけ?としらを切り、口寂しいのかしきりに歯を鳴らしている。
一方の今井はサッカー部の部室から持って来た、自分のユニホームを着て寒さを凌いでいた。
「お前、その格好で授業出んのか?」
横目でジロリと、青いユニホームを着た今井を眺めて太刀川は言う。
「もち。さっさとレポート提出しちまうからな」
栗色の頭を揺らして今井は得意そうに言った。他の科目は赤点確実だから、化学だけに賭けている様だ。
「ああ…あのセクハラレポートな。馬鹿正直だなぁ、お前は」
ブツブツ言っていた太刀川は、ふと思い出した様に今井を見た。
「な…なんだよ」
「お前、課題なんだよ」
太刀川の尋常では無い剣幕に、かなり驚きながら今井は記憶を巡らせる。
「えっと…前立腺はどんな刺激で快感を得るか……みたいな?」
「……………………………………………………………………」
たっぷり十秒以上の間を開けて、太刀川は溜め息を吐いた。
「何だよ、文句あんのか」
今井の野次に耳も貸さずに水面を一心に見つめている。
「バレバレか…」
不意に太刀川がぽつりと呟く。
肩口辺りまで伸びた茶色の髪がサラサラと揺れる。
「太刀川…?」
一体全体何なんだ!?と疑問に思うが、無言を貫く太刀川だから、今井は諦める事に決めた様だ。
「あーあ、気持ちいいなぁ。このまま寝ちまいてぇ」
ふぁぁぁ…と大きな欠伸をして今井はゴロリと横になる。
「…煙草吸いてぇ」
ぽつりと太刀川が呟く。
遠くからチャイムが鳴り響く。授業もやっと終わった様だ。
「肺癌で死ぬな、お前は」
鼻で笑いながら今井が起き上がる。
「さっさと行こうぜ。次の英語は出席日数がヤバいんだよね」
そう言うと、今井は金網をよじ登り、軽い音を立てて地面に着地した。
それにならって太刀川も降り立つ。
「なあ、太刀川」
ふと、真面目な顔で今井が振り返る。
「昨日、お前ん家に居た女と付き合ってんの?」
怒りも悲しみも無い、真っ直ぐな表情で今井は太刀川を見詰めた。
太刀川も立ち止まり、真面目な顔で見詰め返して来る。
流れる風が生暖かい。
今井は昨日の太刀川の部屋の温度を思い出してしまう。
そう、昨日は
正直言ってショックだった。