逆転する関係B-5
「……あたしがみんなの関係を壊しちゃったけど、せめて受け入れるくらいならできるって思ったから……」
由美香が泣きそうになりながら言う。
その切ない表情に、清香は胸を締め付けられる。
三人が三様に彼女を求めて、それを全て受け入れるだけなら彼女はただのずるい女だったかもしれない。
だが、二人の男は結託して由美香の体を暴き、清香はそれについて素知らぬ振りをして、幾度も思い返し、何度も頭の中で犯した。
この事実をただ「受け入れるくらい」しかできないのは当然のことのように、清香は思った。
決して、由美香の発言は狡猾なものでは無い。ただの諦念だ。
「ーーいいんですか」
「だって、もうみんな……少なくとも今は、あたしに対して今まで通りってわけにいかないでしょ」
確かにそれなら、自分の身も心も、由美香に縛られてしまった方がいい。
清香はそう思った。
「ーー体調悪いのに、すみませ……ん。そんなこと言われたら、もう……ひどいことしか考えられな……い」
「そんなことないでしょ。清香ちゃんは、優しい。昨日だって、さっきだって。自分からやめてくれたよ?」
そんな風に言われ、清香は由美香の上に覆い被さる。
「最後までしますよ、あたし……」
「いいよ。教えて、清香ちゃんのこと」
決して長くは無い、栗色の髪の毛が由美香の顔にかかる。
それほどまで、互いの顔が近づく。
ちゅ……と音を立てて、ぽってりとした唇を由美香の唇に押し当てる。清香は恐る恐る、唇を離す。
「女の人の唇、柔らかいね」
そう言って、ふふっと由美香は微笑むと、清香の唇を、人差し指でなぞる。
「あたしなんか抱いても幻滅されちゃうかも。可愛い女の子と、たくさんしてきたんでしょ? あたし、経験少ないから」
「そ……んなわけないです……それとは、別だもんっ」
言っていて恥ずかしくなった清香は、由美香の体を抱きしめると、ぎゅっと目を閉じて唇を塞ぐ。
由美香が唇を半開きにして、それに応えようとする。
清香はゆっくりと、舌を差し入れ、動かしていく。
由美香の口腔内は歯磨き粉の味がして、思わず胸を高鳴らせた。
初めて感じた彼女の味に、もしかしてキスを期待してくれたのではないかと、勝手に錯覚してしまう。
由美香の舌は、今まで体を重ねてきた女性よりも厚さが薄いような気がした。
だが、少し長めで、難なく清香の口腔内に入ってくる。
舌を甘噛みし、もっともっと、と清香は舌を吸う。
(これで、堀尾くんと、高橋くんの……)
ーー瀧岡せんせ……の口、やば……。
キスをしながら、拓真の発言を思い返して清香は顔を熱くさせる。
清香には、かろうじて過去に数える程度、男性との経験があった。
はっきりと同性愛者であることを自覚している今は、男性器を自らに挿入させることなど考えたくなかったし、気質としてはどちらかと言えばタチ寄りではあるが、自分にそれが欲しいとは一度も思ったことがなかった。
だが、あの発言を思い返し、もし自分に男性器があったならーー由美香のこの口腔内に差し込んでしまいたくなった。
そして、乱暴な行為だとしても、由美香のナカに入れる二人が羨ましくなった。