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熱帯魚の躾方
【SM 官能小説】

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映画(四)-1

 映画がクランクインした。何度も脚本家と徹夜を繰り返し、仕上がった脚本だ。主役の男優には実力派俳優の松木陸之助を採用し、真面目で凡庸な熱帯魚店の店主武田を演じる。脇を固める俳優陣も実力派ばかりだ。団音遠と比留川結花がタッグを組むとうだけで、ノーギャラでも出たいという友情出演も数人あった。
 楽屋にはたくさんの花や差し入れが届いた。沙莉宛の物が一番多い。パリからもたくさん届いた。室内に飾りきれず、廊下にまで並べられている。

 まずは、熱帯魚店の武田の日常と妄想シーンから始まる。演技指導の部分も原作者として私の意見を求められるが、私自身を演じてもらうのはどう説明していいのかわからない。
 美羽が口を挟んだ。「先生が当人だから、先生の真似すれば一番簡単ですよね。先生をイメージしてやって貰ったらいいんじゃないですか?ちょっとリアクション薄めで、所々抜けている感じとか。」美羽から見れば普段の私はそんな感じなんだ。

 映画の撮影はストーリー順ではなく、シーン順に撮っていくようで、今日は実際に私の店を使った撮影をしている。朝はボーっと欠伸を繰り返しながら、掃除をして軽く体操のフリをしている私だ。水槽の魚達に話しかけ餌をやったり、スポイトで糞を取る。来客が無い時はコーヒーを片手にパソコンの画面を見ている。

 次に理沙が忘れていったスマホからデータをコピーして、アダルトサイトをチェックするシーン。奴隷契約書を作成するシーンへと撮影は続いていく。

 さすがはベテラン俳優、ミスが無い。

 彼が私のことをもっと落とし込みたいというので、同じテーブルでロケ用の弁当を食べることにした。舞台と違って映画やドラマは、モチベーションが難しいと話していた。シーン毎に飛び飛びでパズルを組み立てているみたいだと言う。
「これ、まさかノンフィクションですか?」「勿論、フィクションですよ!こんなこと、あるわけないじゃないですか?」
 彼としては一番気になるところらしい。草食動物系で優しい人柄で、ホッとしている。

 武田が単独の店内業務をする場面を撮影している間に別チームの結花班は、理沙のアダルトサイト投稿場面を撮影している。
 こちらは、ヌードもあるので、最初は女性チームだけで撮影するようだ。
 初日は、こんな感じで早めに終了した。沙莉が気になるが、顔を合わせてなくて、安堵している自分もいる。
 こうして撮影期間二ヶ月間過ごしていけるのだろうか?

 二日目は現場撮影は無く、初日の撮影の動画を観る。昔と違ってデジタル撮影なので、編集も比較的簡単みたいだ。イタリア映画によくある過去を追想する話なので、店内の熱帯魚がアップで映され、男優のナレーションが入る。
 実際の私はここまでボーっとしてはいないが、薄暗さも上手く出ていてどこか昭和の映像みたいだ。
「うんうん、先生の感じ!よく出てるわ。」結花が腕組みしながら頷いている。「普段の先生ですね。エロさを感じさせないというか、ほんと普通のオジサン。」美羽が話を足す。

 次に沙莉が理沙を演じる映像を観る。誰にも言えないが、実際にサイトに投稿していた自分を自分が演じる訳だから、これ以上の演技は存在しないだろう。
 ほぼ、淫靡な口元から下半身しか映らないがローターでまるで調教されているようにオナニーしたり、アナルジュエルを入れて公園やデパートのトイレで露出したりする映像はあの時観たままだ。
 
 大豆大だったピンク色の乳首は少し赤みを帯びて小指の先ほどになり、相変わらず重力に逆らうかのように丸く張った乳房の上に乗っている。括れたウェストには呼吸する度に腹筋が浮かび、白桃のような尻へと素晴らしい曲線を描いている。
 
「これ、前貼りつけてるの?」団が結花に聞いた。「いいえ、本人がそのままのほうがいいって言うから…。」確かにパンティに染みが浮き出ている。「嘘だろ〜?」団が驚嘆する。
 沙莉は映画を通して私との出会いから調教の日々を再現しようとしているのだ。実際に感じながらやっているのだ。私は激しい興奮とともに鳥肌が立つ思いがした。
 映画の中とはいえ、沙莉が他の男に調教されるのだ。耐えきれるだろうか?

 三日目からの撮影は、理沙がテレビ取材で私の店を訪れるシーンからベタを購入するシーン。アルバイトとして働くシーンから奴隷契約書を交わすシーンあたりまで、店内での細かなところも撮影する。

 現場で演じる沙莉を見ながら、俳優にアドバイスするのが私の役割の一つでもあるが、二人の俳優の演技が完璧過ぎて非の打ち所がない。
 沙莉と時々目が合うが、睨む訳でもなく自然と視線が逸れていく。

「うーん、何か順調過ぎて怖いな!こういう時ほど後で落とし穴があるんだよ!」「団ちゃん、考え過ぎじゃない!これ、すごい映画になるわよ!」団の不安を結花がフォローする。

 自宅のシーンは不動産会社にお願いして、モデルルームを借りての撮影となった。玄関には武田の表札も付けてある。
 夏希帰省でのパーティーシーンは、二人だけに変更、理沙との生活シーンを先に撮影した。問題は、理沙を罠にかけるシーンだ。ここは迫真の演技が欲しい。あの大人しそうな男優に務まるだろうか?

 バン!テーブルを叩く音に続いて、「今帰ったら大変なことになるぞ!」武田が理沙を睨みつけるシーンだ。理沙が追い詰められた小動物のように震え怯える。
「カット!」監督である団が止める。
「ここで少し間を取って、理沙が涙を浮かべる!」原作とは異なるが面白いだろう。
 二人とも見事に演じ切った。スタッフから拍手が上がる。

 一旦、休憩を挟み、理沙のカウンセリングの場面に入る。カウンセリングのやり取りは、実際のやり取りの上にナレーションで流れるようにするらしい。


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