第五十九章 メス犬と少女-1
【啓介と同居 四ヶ月目】
【20●1年4月7日 AM7:30】
翌朝。
リビングで。
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「ごめんなさい、あなた・・・」
新聞を読んでいる啓介の耳に、今日で五回目になる恵の繰り返す言葉が聞こえてきた。
慌しく上着を羽織ながら妻から財布と定期入れを受け取ると、何か企むような表情で武が言った。
「もう、いいよ・・しょうがないさ・・・
恵も俺もグッスリ寝ちゃってたんだから・・・
その代わり・・・」
耳元に顔を寄せて囁く夫に細い手でその背中を叩くと、赤く染めた口元を綻ばせて言った。
「もう、エッチ・・・知らないっ」
「ははっ・・・じゃあな、行ってきます」
武は足取りも軽く飛び出していった。
今朝は大幅に寝過ごしたので、朝食も取らずに出勤する羽目になってしまった。
昨日、一昨日と一泊で遊びに行ったのだ。
帰りも遅く目一杯楽しんだ。
だから遅刻ぐらい何でもなく、それよりも今夜の妻からの「見返り」の方が嬉しかったのである。
まだ耳元に囁きのくすぐったい感触が残るのか、恵は顔を綻ばせながら振り向いた。
そして啓介の視線を感じると頬を染めて、はにかみながら言った。
「すみません、待たせちゃって・・・。
直ぐに朝食の用意をしますから」
「えぇよ・・そんなに急がんでも・・・
昨日は遅かったし・・・」
義父の顔も含むように笑っている。
恵は更に顔を赤くしてしまった。
「まぁ、ええから・・こっちにおいで・・・」
男の言葉に頷きソファーに腰掛けると、直ぐに抱き寄せられた。
「あ・・ん・・・」
恵は一瞬カーテンが締まっているか確かめると、力を抜いて唇を預けるのだった。
「ん・・ふぅ・・ん・・・」
男の舌が入ってくる。
恵の狭い口の中で暴れている。
「む、んん・・ぐぅ・・むぅ・・・」
恵の身体がもう熱く反応している。
さっき夫を見送ったばかりというのに。
昨夜の激しい「営み」が記憶に生々しく残っていた。
今朝の寝坊のもう一つの原因が・・・。