杏奈と健-6
堪らなく愛おしくなり、僕は姉の前に跪き、思いっ切り抱きしめた。
「大好きだよ。姉ちゃん。」
姉は幸せそうな笑みを浮かべ、「アタシも。」と呟き、僕の背中に手を回した。
それから軽くシャワーを二人で浴び、お互いの身体を洗い合って、風呂場を出た。
二人以外誰もいない家の中、何も纏うことなく裸のままリビングに戻ると、「お腹すいたね。何か食べる?」と姉が聞いてきた。
確かにいろいろありすぎて頭の中が混乱していて気付かなかったが、腹は減っていた。
「うん。そうだね。冷凍のパスタかなんかあったよね。食べようか。」
そう言っている間に姉はヤカンに水を入れ、お湯を沸かし始めていた。
「オッケー。ナポリタンでいい?」
そう答える姉の声はいつもの姉だったが、その姿は一糸まとわぬ裸のままだった。
白く美しい姉の裸体は閉められたレースのカーテン越しの緩やかな外からの明かりに照らされ、輝いて見えた。
リビングのテーブルセットの椅子に腰掛け、僕はずっと姉の姿を目で追っていた。
これほどマジマジと姉の裸を見た事などない。
やっぱり美しい。
透き通るような白い肌。
大きな乳房を備える美しい胸。
桜色ともいえる薄いピンクの乳首。
キュッとしまったウエストからなだらかにカーブを描く腰回り。
そして胸と良く均整の取れた大きく丸いお尻。
身長159cmとは思えないほど長くスラリとした足。
ピンと伸びた背筋はどこか気品さえ感じる。
5分ほど経つと、最初の冷凍パスタが解凍され、僕の前へ運ばれてきた。
パスタの横には粉末で簡単に作れるポタージュスープが添えられている。
「アタシのこれからだから、健。先に食べてて。」
姉はそう言うと、さっき沸かしたお湯でコーヒーを入れて飲んでいた。
「うん。じゃあお先に。」
僕が食べ始めるのを見届けると、姉は口にしていたコーヒーカップをテーブルに置き、話し始めた。
「なんか不思議よねぇ〜。大好きな人に大好きって言えて、一緒にいると、こんなに満ち足りた気持ちでいられるんだね。いつも飲んでるおんなじコーヒーでさえ、スゴく美味しく感じるもん。」
それは僕も感じていた。
どこか後ろめたさを感じながら今までは姉を見ていた気がする。
でも、いざこうなってみると、その後ろめたさが消え、一緒にいることの安堵感みたいなものが増していた。
冷凍パスタでさえ高級イタリアンな味がする。
「それ、わかるよ。なんか今までと違うよね。」
食べ進めながら答えると、「健と同じ気持ちでいられると幸せだな。」
姉はマジマジと僕を見つめながらそう言った。
「多分、同じだよ。ずっと好きって言葉を押し殺して見てたもん。その抑圧されたモンがなくなっただけで幸せだと思うよ。」
なんとなく思った言葉を並べただけだったが、姉には響いたみたいだった。
コーヒーカップをテーブルに置き、僕の後ろへ回って来た。
そしてまだ食べている僕を後ろから抱きしめた。
大きく柔らかい姉の胸が主張するかのように背中に感じる。
「健。大好き。」
姉は僕の後頭部へ頬を当て、そっと呟いた。
そんな事をしていると、次の冷凍パスタが解凍されたことを電子レンジがピーピーと鳴って教える。
姉はそれを聞いてそそくさとそれを取りに行く。
今のヤバかったな。
姉ちゃんの胸が背中に当っただけでオチンチンまたおっきくなっちゃったよ。
そう思いながらパスタを口に運んでいた。
姉は出来上がったパスタを手に、僕の向かいへと座った。
クルクルとフォークに巻き付け、パスタを口に運ぶ。
一挙手一投足の動きが美しい。
自分の母親にはない気品のようなものだ。
口に運んだフォークを抜きながら満面の笑みを浮かべる姉の姿がとても愛おしく感じた。
僕も自然と笑顔になる。
満ち足りた穏やかな時間だった。
先に食べ終えた僕は喉の渇きから、冷蔵庫へサイダーを取り行った。
「アレ?健。またおっきくなってない?」
パスタを食べながら姉が僕の下半身を見て笑みをこぼす。
「だって姉ちゃん、そのおっきな胸、引っ付けてくるから···」
サイダーをグラスに注ぎながら、僕は少し恥ずかしさを感じながら答えた。
「健って、心も身体も本当に素直ね。だから大好きよ。」
姉は変わらずパスタを口に運びながらそう呟いた。
「それ、褒めてんの?貶してんの?」
どっちかわからずに聞くと
「褒めてんのに決まってんじゃん」
即答だった。
「だって愛する私の彼氏なんだよ。」
思わず飲みかけたサイダーを吹きそうになった。
その姿を見て姉は「え?違うの?。」と聞き返してきた。
不安そうに曇った顔を見せる姉。
僕は咄嗟に「違わないよ。姉ちゃんは世界で一番素敵な僕の彼女です。」とハッキリと答えた。
安心したように「ウフッ♪良かった♪」と言い、姉はパスタをたいらげた。
僕の食べた皿と自分の皿を重ねて運び、姉はいつものようにシンクでそれを洗い始めた。
洗い終わった皿を受け取り、僕はそれを布巾で拭き上げる。
いつも食事終わりに母の手伝いとしてやっている光景だが、今日はいつもと違う。
二人とも全裸のままなのだ。