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カラフル
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あおいろ-1


 その女は高根の花であった。

 それは私にとってでは無く、全ての男にとっての事である。彼女を初めて目にした者は、それが男であれ女であれ、強さにこそ、美しさが宿る事を知る事になる。表情が鋭いとか、態度が男前であるとか、そう言った端的な事では無く、力強い美しさを、彼女は全身に空きなく体現していたのだ。

 「浅葱瑠璃子」身長170cmの長身の上に、いつも10cm近いヒールを履いていたので、彼女を見下ろせる男は少なかった。いつも好んで黒い服を着ていた。しかしその形は様々で、スキニーなジーンズの時もあり、マキシ丈のスカートやミニスカートの時もあった。上に着る物も、肌も露わなキャミソール姿で、豊かな胸の谷間を強調している時もあれば、ふわふわとしたフェミニンなブラウスの時や、エスニックなプルオーヴァーの夜もあった。しかし、どの時も色は黒だった。髪は真っ黒なショートのワンレングスで、頭の形に添うようなストレートヘアーが、濡れたように艶めいていた。

 そのハッキリとした顔立ちのせいで厚化粧に見られたが、その実、薄く微かな化粧しかしていなかった。ファンデーションは塗らず、眉を少し整え、細いアイラインを引き、薄くルージュを塗るだけで、凛と研ぎ澄まされた美しさが生まれた。

 目は大きく、瞳の色は様々な色が混じり合ったような薄い琥珀色で、いつも鋭い眼光を放っていたが、その目尻は微かに下がり、そこには優しさが宿っていた。
 鼻筋はスッキリと美しく通り、その下の唇は薄かった。彼女の顔立ちからは、もう少し厚みを持った唇の方が似合うように思えたが、その薄い唇が、彼女の顔に品格と知性を与えているようだった。
 腰の位置が日本人離れした高さにあり、長く細い膝下から続く、豊かな胸までの線が、全身の調和の中で、彼女の美しさを完成させていた。その立ち姿は毅然として、あたりまえに周りにいる者達を従えているように見えた。
 彼女は日本人と言うよりも、西洋とスパニッシュが混ざり合ったような、濃い血の色を感じさせたが、純粋に混じりけの無い、九州、宮崎の女であった。

 瑠璃子は私が時折訪れた店のバーテンダーだった。

 男達は彼女を崇め、その言葉にムチ打たれる為に店に足を運んだ。女達は、彼女に憧れ、その言葉に学び、また許される為に集った。私も多分に漏れず、彼女の美しさを摘まみに、酒を飲みに通っていたのだ。

 ある夜、酔った私が彼女に言った。

「瑠璃子はほんとにボンドガールにいそうだよね? ピストル持たせたら似合うんだろうな〜」

 瑠璃子が笑いながら答えた。

「瑠璃子はピストルなんか要らないよ。強いから」

 彼女がそう言うと、確かに、銃を持った男達が群れをなしてやってきても、彼女には勝てないような気がしてくるのだった。


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