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托卵妻奈莉
【若奥さん 官能小説】

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田中との思わぬデート-1

 その日、田中は雨の止んだ道を奈莉を自宅まで送り届けた。奈莉は帰宅してもドキドキをとめることが出来なかった。好きだった田中にキスをされたのだ、ドキドキワクワクしてもいいんじゃないか、少なくとも少しの間この仕合せな気持ちを保っていたいと奈莉は思った。

 金曜日に勤め先の外販店舗に行くと、バーベキューに来ていた和美が棚卸のため来店していた。おしゃべりの中で和美が言うには、田中が三年前に妻をがんで亡くして子どももなく独身でいる、両親の介護があって再婚もしばらくできないということらしかった。
 それならなおさら奈莉は田中に迷惑をかけるわけにはいかない、もうこれっきりにした方がいいと思った。田中とこれからときどきでも逢って食事でもできればと甘い期待をしていたが、きっぱりあきらめるしかない。仕事で逢うということもそんなにあることでもなし、他に相手を探した方がよい、そう思い直して少しがっかりして仕事を終えて帰宅した。
 帰宅して夕食の仕事をしていると、携帯に会社から電話があった。
「はい、もしもし、はいそうです。大丈夫ですよ。
ええ、はい、、はい、、、、はい、、、、来週の火曜日、、、はい、わかりました」
 来週の火曜日は朝から外販先でなく会社に来てくれとの連絡だった。

 久しぶりで都内に出て本社の方に来たことになる。それなりに服装も整えたつもりだが、奈莉は少し緊張した。午前中事務と打ち合わせをして昼食後残りの打ち合わせをして帰宅して良いとのことだったので、お茶を頂きながら小休止していると、田中が目の前にいた。
「奈莉ちゃん、仕事終わったんだって?僕ちょうどその方面に車で行くんだけど、送って行ってあげようか?いいかな?」
「ええ、それは有難いんですけど、、、」
「えっ?これから立ち寄るところでもあるの?」
「いえ、それはないんですけど」
「じゃあ、送って行くよ、さあ、行こう」
 速いテンポでそう言われて仕方なく田中の後を駐車場に向かった。
 この間と同じ助手席に座って田中の運転に身を任せた。しばらく走ると田中は帰る方向でない高速にのった。快適に飛ばす車の中で田中ははじめて口を開いた。
「奈莉ちゃん、この間はごめんね。ぼく、そんなつもりは無かったんだけど君のことが気になっていたもので、、、、
奈莉ちゃんには仕合せになってほしいと思っていました。だからこれからもそうであってほしい、、、、、、、この間はすみませんでした」
 奈莉に田中の思いやりが伝わってきていた。どう答えたらいいのだろう。奈莉は嬉しくて言葉が出てこなかった。
「奈莉ちゃん、怒ってる?ほんとにごめんなさい」
 そこまで言われて奈莉は慌てた。そしてあらぬことを口走ってしまっていた。
「いえ、そんなことないです。わたし、嬉しくて、、、
私、田中さんのことが好きだったので嬉しかったです。あっ!今も好きです」
 言った後、しまった!、と思ったがもう遅かった。その後二人は沈黙の中に入って行った。
 田中は、郊外のインターを出て山の中の公園に車を止めた。平日なので駐車場に車は無く、人の気配も無かった。
田中はしばらく黙っていた後、深呼吸をして奈莉の方を向いた。
「奈莉ちゃん、ぼくも好きだよ」
と言った。そして奈莉の目を見つめた。奈莉は、言っておかなければと思い、
「わたし、子どももふたりいるし、
主人とは合わないんですけど家庭を壊すつもりはないんです。
それだけは、子どもたちを悲しませることは絶対したくないんです。だけど、、、、、、
女として満ち足りた人生は歩みたくて。このまま恋もせず、ときめきもなく人生を終わりたくないんです、、、
このままときめくこともなく、女としての仕合せを味わうこともなく、、、、
そんなの、、、、耐えられない、、、、
田中さん、その気持ち、わかってくれますか?」
 田中は、一言一言を噛み締めるように真剣に聞いていた。
 少しの沈黙が二人の間に漂い、田中は何かを考えている風だった。
 田中は意を決したようにぽつりぽつりと語りだした。
「わかる。奈莉ちゃんの気持ちは。よくわかるよ、、、、、
ぼくも妻を亡くして独り身なんだけど、両親の介護も大変だし好きになったからってそう簡単に相手の女性の人生そのものを変えることは出来ないと思ってる。
だけど、人生は一度きり。
男と女がその枠を守りながら恋をすることは、
誠意を精一杯尽くすということが非常に大事なことだと思うけれども、
それが前提だけれども、
それは許されていいんじゃないか。
ぼくもそんなふうに考えてもいいのじゃないか、と思う。
だから、奈莉ちゃんさえ良ければこうして時々あって一人の男と女としての時間を持たないかい。決して守っている枠を壊さないって、絶対にその約束を守るということで」
 奈莉は田中がそこまで考えてくれていることに胸が熱くなった。決して田中が打算でそういうことを言う人でないことは奈莉にはわかっていた。自然に目が泪で潤ってきていた。
奈莉は自分でシートベルトを外して少し向き直り田中を優しく見つめた。そして、
「はい、ありがとうございます。
わたし、、、田中さんとこれからも癒し合う時間を持たしてもらいたいと思います。お願いします」
「ありがとう、、、こちらこそお願いします」


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