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カラフル
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みどりいろ-5


「可愛いお部屋……」翠が言った。

 枯れた壮年の孤独に満ちた部屋を、可愛いと言われて戸惑っていたが、少女たちの修飾には二通りの言葉しかない事を思い出した。「可愛い」か「可愛くない」だ。すなわち、それは賛辞の言葉であって…… などと意味の無い事を考えながら、彼女の魅力から目を背けようとした。

 自分の為に、グラスにウイスキイを注ぎ、彼女には冷たい水のグラスを用意した。
ソファーに並んで座り、入れっぱなしになっていた古い映画のDVDを流した。

 彼女は、私にもたれ掛かるように暫く黙ってソファーの左端の置かれた画面を見つめていたが、そっと振り返って私を見ると、私の前のグラスを取って口に含み、顔をしかめて笑った。

 私は、ウイスキイで濡れて光る唇に吸い寄せられるように、微かな口づけでそれを拭った。彼女は静かに目を閉じて、睫毛を震わせた。

「駄目だ、若すぎる」「駄目だ、若すぎる」「駄目だ…… 若すぎる……」
三度繰り返し、自分に言い聞かせたが無駄だった。
 
 私は更なる口づけを求めて、彼女の顎を支えて私に向き直らせ、唇を重ねようとした。

 彼女は軽く首を振って私の手を払いのけ、そのまま首を振りながら、画面に視線を戻し、私に背中を向けた。私の失意は諦めに変わり、その先に安堵をもたらすはずであった。しかし、彼女がそうさせてはくれなかった。

 彼女は背中を私に預けるようにもたれ掛かっていたのだが、自分が外した私の右手を今度は自ら手繰り寄せ、右肩から左の腰まで身体を斜めに横切るように回し、その腕を抱き絞めた。私は彼女の髪の匂いに包まれた。

 彼女の頭の先は、私の目の高さにあり、彼女の右耳が私の唇に触れそうだった。視線を落とすと、そこにはVネックのセーターの谷間から覗く胸の肉付きが、彼女の若すぎる体温を立ち上らせていた。そして私の上腕の内側には、その胸の硬い柔らかさが、彼女の鼓動を伝えていた。

 私は無性に酒が飲みたかったが、酒は私の右側にあり、私の右手の自由は奪われていた。自由なのは左手と唇だけだった。私は彼女の耳の下の首筋に口付けた…… 
 彼女はビクンと身体を硬直させたが、無言で私の右手の指を強く握った。その動きが拒絶なのか許容なのか、私には分からなかったが、その時はもう、どちらでも良かった。私は彼女の耳をそっと噛み、うなじに口づけ、首筋を鼻先と唇と舌で愛した。そして、もう一つ自由だった物、左手の指先で細く浮き出た鎖骨をなぞり、胸の肉付きが厚みを増して行くのを感じながら、ゆっくりと時間をかけて下げて行った。その囁くような遅々とした時間の中で、彼女の許しを確信して、私の湿った手の平は、セーターの内側に沈んで行った。

 指先が微かに乳首の硬さに触れた時、彼女は低く短く小さな声を上げた。そして身体をひねるように私の方に向き直ると、両腕を私の首に絡めて、熱いキスをした。その時彼女の眉尻は切ないほど下がり、眉間の皺は深く淫靡に刻まれた。


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