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托卵妻奈莉
【若奥さん 官能小説】

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啓一との突然の別離と予感-2

 奈莉は今日楽しみにしていたことが無くなり、そしてこれからも無くなったことにがっかりしていた。せっかく啓一との間をここまでの関係にすることが出来たのに。考えれば考えるほど残念で哀しくなるほどだった。じっとしていると泪が出て来た。奈莉は自分が啓一をほんとに好きだったのだと思った。こういう思いをしたのは独身の頃以来で女性の心根の奥の方が泣いていたということなのだろう。新たな恋をして奈莉のこころが若いころのように感受性が強く豊かになったということだった。
 しかし、よく考えてみると奈莉にも責任が有ったのかもしれない。奈莉が啓一を誘ったので、啓一としては女性はそんなものかもしれないと思い、そのお客さんが喜ぶと勘違いして触ってしまったのかもしれない。
でももう終わったことだ、次に向かってやっていこう、ちょうど仕事も見つけたところだ、そうだ、そうしよう、と奈莉は明るく思った。
 そう言えば昔の仲間が復帰の集いをしてくれると言っていた。その会社は水曜と木曜が休日でよく水曜に郊外にバーベキューに行っていたことを思い出したが、昔の仲間に問い合わせたところ、やはり水曜に郊外でバーベキューで、ということであり、すぐに来週の水曜日に開催が決まった。
 啓吾には夜遅くなるわけではないので、あとで予定を伝えておいた。

 水曜日の朝、かつての仲間と落ち合い、車で郊外に向かった。諸事手慣れた人たちで滞りなくバーベキューが行われ、車を運転しない奈莉はビールも少し飲んでおいしく肉を食べながらかつての仲間と旧交を温めた。
 仲間の中には、珍しく年配の田中がいた。奈莉が勤めていた時は主任だったが今は課長になっているらしかった。10年以上前、奈莉は田中にあこがれていた。当時すでに田中は結婚していたのでなにかあったわけではないが、こうして久しぶりで会ってみるとかつての気持ちが甦ってよく話を滑らせていくことが出来ず、すこし残念だった。
 それでも久しぶりの仲間との交流は愉しく過ごすことが出来た。朝から始めたので二時過ぎには終いに掛かり、三時前には帰路についた。
 奈莉の家が帰宅路の途中だということで田中に、
「奈莉ちゃん、ぼくが家まで送ってあげよう」
と言われ、奈莉は少しドキドキして
「ありがとうございます、田中さん。課長なのに今日は私の復帰祝いに来てくれて嬉しかったです」
と言った。

 田中の車の助手席に座り、他に連れがいなかったので帰りの車では田中とたっぷりと話しが出来て奈莉は嬉しかった。奈莉の家族構成や日頃のことなどこれからもお世話になることから伝えておいた。
 しばらく走っていると急に天候が怪しくなり、どしゃ降りの雨が降ってきた。市街地に出る前のことで道を迷ってしまっていた。ナビにもない道らしかった。しばらく雨がおさまるまで止まって時間を過ごすしかないようだった。
「困ったねえ、、、でも少し雨が上がればなんとかなると思うから、すこし休んでいよう」
「はい、車の中ですから心配ないですね、、、」
とそのときだった、ドスーンという音がして近くに雷が落ちたようだった。すごい音だった。
「キャー――アーっ!!」
と奈莉が思わず声を出した。するとさらにドスドスーンっとまたすごい音がした。
「キャア―――!!」
と奈莉は耳をふさいで、田中の方へ身を寄せた。田中は奈莉の肩を抱き寄せ、
「奈莉ちゃん、大丈夫だから、あと少し我慢しよう」
と言って田中は、寒さで少し震えの来ている奈莉を抱く手を強めた。
 雷はしばらく鳴りやまなかった。その間二人は黙って抱き合っていた。奈莉がすぐに抱かれた恰好で田中の胸に抱きついていたからだ。
 二人は雷のおさまるまで三十分ほどをそうして過ごした。そして雷はようやく収まった。雨はまだかなり激しく降っていた。奈莉は田中を離さなかった。
 そしてそうして一時間ほど経った頃だろうか、雨が少し小降りに変わってきたとき、奈莉が、
「わたし、田中さんのこと、好きだったんですよ」
と小さな声で言った。そう言ったせいで奈莉の中に寂しさの風が吹き込んできた。
「いま、わたし、夫に連れなくされて寂しいんです。
それを紛らせるために仕事したいと思って、、、、」
 田中はその言葉に奈莉の状況を敏感に把握した。彼も実は以前から奈莉のことを好いていた。だからこそ今日も来たのだった。
 しばし沈黙が二人を包んだ。田中は奈莉一旦引き離し両肩に手を置くと奈莉の目を見つめた。そして肩を引き寄せようとした。奈莉はこのときを待っていたのかもしれなかった。もう止めることなどできるはずもなかった。田中は両手に力を込め、唇を寄せて来ようとしていた。奈莉は目をつむり、田中の唇を受け入れた。


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