新人ママは-1
小田先輩が前立腺がんが見つかりいろいろ大変なことがあって、私も前立腺の生体検査をして都さんや平野医師との楽しい時間を過ごした後、2か月ほどしたある日、小田先輩から電話があり、夕方例の「クラブPROSTATE」で落ち合うことになりました。
久しぶりにドアを開けて中に入ると、薄暗いカウンターのの中には例のママはいませんでした。小田先輩がカウンターの一番奥で手をあげ、「よ、こっち。」 「やあ、先輩どうでした?その後。」 「あ、うん、まあ大変だよ、まあ、転移が見つからなかったから前立腺だけの治療だからね。まあ、これから仕事をしながらぼちぼちだ。」 「はあ、僕もあれからPSA検査を受けたんですよ。そうしたら7、5でしたから、生体検査をやられましたよ。いや〜、えらい目にあいました。ま、何もなかったですけどね。おかげで。」
「そうか、よかったなあ。うん、それに比べて俺はさ・・・。ま、仕方がないわ。それよりここのママが変わったんだ。お〜い、ナナオちゃん、こいつ俺の後輩山田啓介よろしくな。」 厚化粧の40前ぐらいの少しグラマーなニューハーフの新しいママが、ちょっと低い声で、「いらっしゃい、ナナオで〜す、よろしくご贔屓に。」 「前のママは?」 「あら、ご存じなかったの体を壊しちゃって入院しちゃったの。それで私が急遽ピンチヒッターでママになっちゃった。よろしくね。小田さん、山田さんて男前ね〜私、こんな男性に抱かれたいわ。」
「おいおい、こいつはそう言う趣味はないんだよ、俺と違って。」 「あら、そうなの?もったいないわ、私達なら喜んで抱かれちゃうのに、ねえ、山田さん、ストレスが溜まったらいつでもおっしゃって、私が解消してあげる。」 「は、はあ。」 「ママ、あんまりこいつを誘惑するなよ、こいつはかみさん一本なんだから、なあ、山田。」 「は、はあ、まあ、そうですね。」
「俺も新しいママと一晩過ごしたいけどさ、抗がん剤の副作用で疲れが酷くてさ・・・。ママに愛されたいけど、残念だ。」 「まあ、残念、でも小田さん、無理しないでね、前のママも心配していたわよ。」 「あ、うん、俺のことより自分のことを心配しろって伝えておいてくれよ。なんせあのママは俺の童貞とアナルバージンを捧げた大事な人なんだからな。」 「あら、そうだったの?知らなかった。じゃ、あなたも元気になって、ね、私と楽しみましょうよ。」 「そうだな、もう少ししたら俺を慰めてくれよ。」 「うん、任せておいて。じゃ、ちょっと失礼して向こうへ。」ママは向こうのテーブルの方へ行ってしまいました。
「はあ、抗がん剤を投与されるととにかく体が辛くてな・・・、とほほだよ。」 「お酒は大丈夫なんですか?」 「あ、これ、ノンアルコールにしてもらっているよ、ここの雰囲気だけ味わっているのさ。」 「なるほど、そう言う手がありましたね、今は。」 「なあ、お前、こういうところの子と一度は遊んだほうが面白いぞ、女性とは全然違うから、だって向こうはこっちの体のことをよく知っているだろう?同性だから。だからこうすれば喜んでもらえるとか、サービスが凄いんだ。とにかく女性では味わえないものを感じさせてくれるぞ。どうせ、一度だけの人生だ、いろんなことをして楽しんだ方が勝ちだぞ。」 「は、はあ。でも、なかなか勇気が・・・。」
「そうか、勇気がいるのか。」 「はあ、一線を超えるって言う勇気が。」 「まあな、昔は変な目で見られていたけどな今は自由な恋愛だぜ。LGBTだよ。そ、恋愛は自由だ。」 「は、はあ。」 「あのママ、一目惚れみたいだぜ、お前に。」 「え!そ、そうですか?」 「ああ、今もお前の方ばかり気にしてチラチラ見ているよ。」 「そ、そうですか?ちょっと複雑ですね。」 「おい、ママ、こっち。」 「は〜い、小田さんどうしたの?」 「うん、こいつにあんたたちの良さを教えてやってくれないか、いつでもいいぞ。」 「え!わ、私でいいの!」
「そう、ママが一番だ。こいつはな、興味があるけど勇気がないって言っているんだ。だからママがその楽しさを教えてやってくれ。」 「え〜!せ、先輩!私は・・・。」 「山田さん、私、あなたならいつでもオーケーよ、連絡をくれたらいつでも教えてあげる。」 「は、はあ。」 「な、山田、ママはお前に一目惚れしたんだよ。なあ、ママ、そうだろう?」 「え!小田さん、どうして?」 「ママ、さっきこいつが入ってきた瞬間に凍り付いたようになったじゃないか、違うか?」
「小田さんて眼力が凄いのね。その通りよ、一目惚れよ。」 「な、山田、言った通りだろ?今度暇を見つけてデートしてやれ、いいか?」 「は、はあ。」 「ねえ、ラインのID交換しよう、山田さん。」 「は、はあ。」私は自分のラインのQRコードをママに見せ、メールの確認をしました。
その日は、どう言っていいのやら、なんとも掴みどころのない感じで小田先輩と別れました。
私は都さんと会った時ラブホで、「山田さんて、アナルでも感じるの?」 「え!どうして?」 「う、うん、あの検査器具を先生がを入れた時麻酔が聞いているはずなのに微妙におちんちんが反応したのよ。私後ろから見ていて感じちゃった、ああ、山田さん、アナルも感じる人かもってね。」 「そ、そうかい?」という会話があったのを思い出しました。そして麻酔が切れた後、おむつをされたお尻が疼いていたかったので痛み止めの薬をもらったけれど、結局菊の花の周りの微妙なその痛みを感じていたかったから飲まなかったんだ。あの痛みを伴う感じが私の前立腺を刺激していて・・・。今、私は心の中ではママに抱かれたいのかもしれないな、とふと思いました。小田先輩は、「人生は一度だけ、もっと自分に正直に楽しく生きた方があとで後悔しないぞ。」と言っていた。私は、その言葉に凄く心を動かされた、ズシンと心に突き刺さってきました。(そうか、その時したいことがあればしておいた方がいい、と言うことかもしれない。)