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アンソロジー(三つの物語)
【SM 官能小説】

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星彩 ……… 第二の物語-5

鞭や蝋燭、卑猥な器具、注ぎ込まれる浣腸液、ありとあらゆる辱めと嗜虐に耐えることができる自分が不思議だった。わたしだけに向けられる彼の欲望に服従することで、わたしは自分でない自分に変われるような、何かにゆるされたように癒された。
好きとか、恋とかいう言葉以上の心のゆらめきが色彩を帯び、自分が彼のものになっていくという溺れる感情だけが深められていき、わたしが彼から離れられない女になっていくことにわたしは酔い過ぎた。
彼とは二年ほどつき合った。そのあいだ彼が別の女ともつき合っていたことをわたしは知らなかった。偶然の夜の街で見かけたふたりの姿……女はわたしよりはるかに若く美しかった。まるでグラビア誌から抜け出したモデルのような女だった。彼はその女を抱いた手で、わたしを縛り、虐げていた。わたしは自分がそうされるためだけの女だったこと、それ以上の女ではなかったことに気がついたとき、彼と別れた。


縄がよく似合う人ですね、あなたは……。老人はあのときの男と同じことを言った。
「あなたの体が縄を欲しがっているのが、縛っているあたしの手に痺れるように伝わってきますよ」そう言って老人は淫靡な笑みを口元に浮かべた。
どうしてわたしは縛られるのが似合う女なのか、それはあのときも今も同じだった。縛られることで誰かの視線を深く体の奥に吸い込むことができる予感を感じたからだった。自然に心と肉体を無防備に封じられることで憂えるような湿り気は切なく肉襞を潤ませ、懐かしい体の記憶に媚びるように浸る。その感覚にわたしの体はもっともっと敏感になっていた。
いつのまにか余分な白い脂肪がいたるところに付き始めたわたしの体は、何かを求めてさまようような気だるく物憂い肉の感覚を漂わせ、わたしの心を置き去りにして老人の縛りに溺れるように浮遊していった。
縛られることがほんとうは嫌ではない……そんな女だと自らを感じ取ったのだろうか、肉体の自由を奪われることで、自分の中に潜む、わたしが知らない、わたしという女がふたたび目覚めさせられていく。それは懐かしい感覚だった。何よりも、老人がわたしを強く縛れば縛るほど、辱めれば辱めるほど、汚せば汚すほど、わたしは、なぜか遠い記憶の中にある、あの男の子の視線に晒される疼きを感じ、切なく身をたぎらせ、嫌でも濡れていくような気がした。

夢を見なかったら………もし、あの男の子の夢を見なかったら、わたしは老人に縛られることを拒んだかもしれない。

後ろ手に手首を縛った縄、豊か過ぎる乳房の上下と谷間を厳しく戒めた縄。肌に痛々しく喰い込んだ縄はわたしの心を剥ぎ、毟り、掻き、炙り、わたしをもっと裸にしようとする。そして心の奥底と肉体の記憶まで浮き彫りにしていく。
わたしはベッドに押し倒された。縄で縛られてゆがんだ体の上でくすんだ音がする。老人の指がわたしの肌の体温を吸い、卑猥に、目まぐるしく這う。彼の尖った指先が乳房にのめり込み、乾いた指の重みが肌にひろがり、薄い被膜となってわたしを包み込む。
仄暗い霧のようなものがわたしの肉体と心の隅々まで忍び込んでくる。苦しげに体をよじらせると、老人はわたしの心をもっと覗こうとする。あの男の子だけに覗かれたわたしの記憶の襞を。指はいつのまにか、唇に変わり、舌になり、肌の毛穴の表面をすべり、微かに滲んだ体液を啜りはじめる。



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