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アンソロジー(三つの物語)
【SM 官能小説】

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星彩 ……… 第二の物語-13

わたしはすっと冷気が漂った唇に、なぜか自分の性器の感覚がよぎった。唇なのか、性器なのかわからない感覚だった。唇がゆるんだわたしの肉襞だと思えばわたしは無心に彼の醜いペニスを口に含み、舐め尽くすことができそうな気がした。いや、それは自分の唇が老人のペニスで汚されたいという奇妙な自虐の欲望だった。
薄く開いたわたしの唇に老人は指でつまんだ自分のものを差し入れる。先端の鈴口に透明の液を含んだ亀頭がねっとりとわたしの唇で包み込まれ、肉塊の感触が歯に微かに伝わる。
「もっと深く咥え込むのです。自分でもわかるでしょう、あなたの体があたしのものを欲しがっている疼きが。唇の内側で歯を包み込むようにして、こすりあげるのです。そうです。よくおわかりだ。やはりあなたはこういう経験をお持ちのようですね。女はいつでも自分を脱ぎ捨てて、ほんとうの自分の顔を晒してこういうことができるのです。かわいいあなたの顔に魅力的な淫らさが見え隠れしている。思い出したでしょう、あなた自身がどんな女であるか…………」
老人の低い声がわたしの頬を淫靡に撫でる。それは深い沼底の泥から、わたしが知らないわたしを掬(すく)うように聞こえてくる。

「もっと気を入れて………今の自分を脱ぎ捨てるのです」
無心に老人のものを舐め尽くす。縛られた体をよじり、のけぞらせ、乳房の先端を揺らし、身体全体がうねるように老人のペニスを舌と唇で捏(こ)ねる。
口の中が生あたたかい肉塊でみたされ、頬の奥の皮膚が幹の先でつつかれると少しずつ滲み出てくる唾液が水泡となって濁り、澱みはじめ、唾液はあとからあとから舌の上に溜まり、抜き差しされる肉幹が唇をこすりあげると、舌が吸いつくように肉幹に無意識にからみつく。老人のものはわたしの口の中でしだいに蛇の頭のようにもたげ、肥大し、堅さを増し、わたしの息をふさぐように蠢く。


その日の夜、わたしはなかなか眠れなかった。部屋の静寂はいつもと同じだった。風景の何もかもがわたしに背を向けたように沈黙している。
わたしは息苦しい部屋の空気を追い払うために窓を開けた。雨はすでに止んでいた。暗闇に包まれた家の周りは静まりかえっていた。遠くで電車が通り過ぎる音が聞こえた。樹木のあいだから星が見えたとき、あの男の子の姿を思い浮かべようとした。形のない不確かな彼の気配と彼の視線の記憶をたぐり寄せようとした。なぜなのかわからなかった。無性に彼の記憶に浸りたかった。そしてわたしはいつのまにか深い眠りに堕ちていった。



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