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アンソロジー(三つの物語)
【SM 官能小説】

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星彩 ……… 第二の物語-11

あなた、誰なのかしら……。ほら、ぼくですよ、覚えているでしょう……だって、ぼくは、いつもあなたを見ていたでしょう。

夢の中で彼がわたしにそう言った。視線がとても優しく、甘く、心地よく頬を撫でると、火照った体の中で泡が湧きたち、どこからか滴ってくる瑞々しい雫に潤されながら、わたしは彼に見られている視線に酔っていた。それはたぶん遠い記憶の果てからこぼれてきたものに違いなかった。その視線は、心が掻かれるような薔薇色の光を孕み、菫色の黄昏に切なく拡散していくのをわたしは必死で追いかけていた。

彼の視線はいつのまにか星の光になっていた。そのときわたしはあのとき彼が言った言葉を思い出していた。

――― 星の光はいつもぼくたちを見ていて、その光には彩(いろ)があります。ぼくたちだけが見ることができる彩(いろ)が……。

わたしはそのときすでに夢から覚めていたのかもしれない。窓から外を眺め、静寂に身を浸したまま夜空を見上げていた。体の奥に星の光の彩(いろ)を感じた。それは不思議な記憶の感覚であり、ゆるぎのないわたしの彩(いろ)のように思えた。肉体から失われていったものを記憶の中から掬い、今のわたしの体に光をあてるものだった。
わたしはあの男の子の姿を思い浮かべようとしたが、どうしても脳裏に描くことはできなかった。彼の瞳から注がれる視線も、唇から洩れる息づかいも、体のぬくもりもどこかに感じているのに、彼の顔も姿をあたしは描けなかった。

ふと気がつくとわたしは空に散りばめられた星だけを見ていた。なぜかそのときわたしの体の奥がどうしようもなく疼いた。それが四十九歳になった女の体なのだろうかと、ふと自分の肉体がまるで別人のようにさえ思えた。それはきっとわたしが見上げた星の光のせいかもしれない。
わたしは脚を開き、下着の上に中指をすべらせた。指がひとりでに肉の溝をなぞるように蠢き、下着の生地の湿り気に吸いついた。
風が肌を透かして通り抜けていくような寂しさを体に感じた。その体はとても欲しがっていた……何を……いったい何を欲しがっているのだろうか。自分でもわからなかった。
心と体に潜むものが何かを求めて喘いでいた。それはきっと彩(いろ)なのだ………わたしが失った、わたしだけの彩(いろ)。それは体の奥の、もしかしたらわたしがまだ知らないとても深いところにあるものかもしれない。そう思うとわたしは下着に包まれた肉の合わせ目に強く指を押しあてた。海綿状に溶け出した肉洞が悶えるように彩(いろ)記憶を求めていた。




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