すれ違い-4
「レロレロ……ぁむ、んチュウ……ぁあん……!」
Wはふたたびゆきに尻を突き出させ、抽送の速度を増す。
「ぁあん……! んぁああ! んひぃ……! んぐっ……!」
パンパンパンパンパンパンパンパン――。
「んひぃ……! んふぅ……! ぁあひ……! んふぅ……!」
パンパンパンパンパンパンパンパン――。
「ぁひぃ……! んひぃ……! ぁひぃ……! んひぃ……! ぁひぃ……! んひぃ……!」
顔は依然としてかつての美少女の面影を残し、肌や髪の色艶も衰えを見せていない。まるで本当に当時の「ゆきちゃん」の肛門を犯しているかのような背徳感。なのに体型は人妻らしく適度なだらしなさを帯び、乳房は揺れ、腰回りは薄っすら肉づき、ヒップが波打つ。そんな人妻が尻を高く突き出し、アナルをペニスでかき回され「んひぃ」と鳴いている。
美魔女の水着審査でも知ってはいたが、裸にしてみないと、抱いてみないとわからないことはある。
まさかここまでいい女になっていたとは。
Wはまた我を忘れそうになる。自分らしくもない。しかしようやくこの女のアナルをようやくモノにしたのだ。存分に堪能し、しゃぶりつくしてやる。
「ぁああ、そろそろイくぞ……すまない、また中に射精(だ)させてくれ……ぁああっ!」
パンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパンパン――。
ネチ、ネチョ、ヌチュ、ネチョ、ニチャ、ネチョ、ニチ、ネッチョ、ネチ、ネチョ、ヌチュ、ネチョ、ニチャ、ネチョ、ニチ、ネッチョ、ネチ、ネチョ、ヌチュ、ネチョ、ニチャ、ネチョ、ニチ、ネッチョ、ネチ、ネチョ、ヌチュ、ネチョ、ニチャ、ネチョ、ニチ、ネッチョ。
「Oさん……! 出る……! もっとお尻突き出して……! ぁああ出すぞ……!」
「ぁんひぃぁいい……イぐ……そこ……だめ……ぁあぁあ! んひいいいいイぐ……イ……っちゃうだめ……ぁああそこ……イぐイぐイぐイぐ……っちゃうぅぅぁんひっ……! んひぃいいいいいいぃぃぃああああああ!」
Wが短く「うぅ……っ!」と呻く。
太い腕で、ゆきの腰のくびれをがっちり抑えつける。
男性上司と女性部下の下半身が一ミリの隙間もなく密着した状態で、Wは腰を震わせる。
ビュルルルルル――ビュルルル、ビュルルルルルルル――。
四つん這いのまま背をのけぞらせ、天を仰ぐゆき。口の端から唾液を垂らし、絶叫する。
「ぁあがっ……んが……! ぐ……んぐぅ……! ぁああああぁああひぃぃいいいひぃいぃいい……!」
ビュルルル――ビュル――ドクドクドク――ビュルル――。
今をときめく美人妻が白目をむきオーガズムに達しながら、肛門に上司の精液を流し込まれるという壮絶な姿。
Wは何度も腰を打ち付ける。打ち付けるたび、腰を震わせ自らの精を一滴残らずゆきの直腸へ注ぎ込む。
男女の粘液が、肛門の中で混じり合い、女の肉襞一枚一枚に塗り込まれていく。
ビュルル――ビュ――ドクドク、ドクドクドク――。
「ぁあ……ぁが……ぐ……ん、んん……んふぅ……んふぅ……んふぅ……んふぅ……」
*
ホテルの部屋に、静寂が訪れた。
ゆきは自らの肛門に挿入されたままのペニスがときおりひくつくのを感じながら、さきほどの会話を思い出していた。「裏で動いている」とうWは言っていた。彼の人脈を考えれば不思議はない。この人は本当に、自分を性接待から救い出してくれるのだろうか。
捨てたはずの希望が、かすかな光を発している。
陰茎がゆきのアナルから引き抜かれるとき、にゅぷん、と間抜けな音がした。
男女の性液でテラテラ光るペニスを、Wは無言でゆきの顔の前へ差し出す。
ゆきは自らの前に仁王立ちするWの顔を恐る恐る見上げた。
愛おしそうな目で、自分を見つめている。
Wさん、あなたの言葉で今の私の心には希望が芽生えています。この芽に水をやり、育ててもいいのでしょうか? 本当に私を助けてくれるんですよね? 信じていいんですよね? なら私は、そのときが来るまで自分を殺します。死んだまま、務めを果たし続けます。だからお願いします。私を助けてください――。
ゆきはだらんと垂れたWのペニスを一瞥すると、陰茎に手を添え、口に含んだ。
死んでいれば何があっても辛さなど感じないはず。
美しい女性部下が、卑劣な上司へのお掃除フェラを開始した。
肛門生挿入、膣内射精(なかだし)を済ませたばかりのおぞましい肉塊を、自らの口を使い綺麗にする。
腐臭を発する汚物に舌を這わせ、絡みつく粘液を擦り取る。
この男こそが、自らを性接待地獄へと突き落とし、大切な家庭を完全破壊した張本人とも知らず。
自らを救ってくれる世界でたった一人の男と信じ込まされて。
*
昨夜来の疲れからか、ホテルを望むカフェの席でいつしか眠りに落ちていた。
夕刻目を覚ますとOは時計を確認し、慌てた様子で伝票を掴みレジへ向かう。
会計を済ませているちょうどそのとき、道を挟んで反対側のホテルから、ゆきとWが出てきた。
一台のハイヤーがロータリーに音もなく停車し、二人を飲み込む。
夫がカフェを出ると、眼の前で信号待ちするハイヤーが目に入った。ホテル周辺にはありふれた光景ゆえ、夫がそこに注意を払うことはないし、注意を払ったところでスモークガラスの中は見えない。
妻は、顔を上げれば夫がすぐそばに立つのが見える状況にあった。が、彼女もまたこのあと自らを待ち受ける地獄を思いうつむいていた。夫婦はついぞ互いを認識することがなかった。
交差点。たった一枚の車窓をはさみすれ違う夫と妻。距離にしてわずか二メートルのすれ違い。
その距離はすぐ、十メートル、百メートルと隔たりを広げ、やがて互いを見失った――。