添い寝 「眠れる美女」-1
「死にたかったのかしら?」
公園沿いの歩道には、干からびたミミズの死骸が散乱していました。地面から這い出て、この焼けたアスファルトの歩道を這えば命を落とすのは解り切ったことの様に思えたのでした。そしてそれらの間には時折蝉の抜け殻が落ちていました。
「片方は死ぬ為に、もう一方は生きる為に歩道の上に這い出て、どちらも今は同じ様に干からびている。生きたいともがくのも、死にたいともがくのも、結局は同じような虚無の世界に辿り着くのかしら?」
そんな事を考えながら、私はおじさまの家に向かっていました。
あの日。直ぐにでも訪れるかと思われた生理は、結局昨日になってやっとやって来て、その日私はかなりの腹痛に悩まされていました。
「おじさま!」
ドアが開いて、笑顔のおじさまを見た瞬間、私はおじさまにしがみ付いていました。
おじさまの大きな両手が汗ばんだ私を迎え入れて、おじさまは私の髪に口づけをくれました。
私はおじさまの匂いを胸一杯に吸い込んで、もうそれだけで幸せを手に入れたような気分に成りました。
その日おじさまは珍しく服を着ていました。トップグレーのスウェットパンツに白いTシャツ姿のおじさまは、これからジムにでも行く様なスポーティさを感じさせました。
私は、意味も無く理由も解らないまま、つい生理の時にいつも着てしまう赤いショートパンツにネイビーのTシャツを着て行きました。
「あっ シャインマスカット⁉ 凄い! 嬉しい!」
リビングのテーブルにはガラスのボウルに盛られたマスカットとカットレモンを浮かべたお水が置いてありました。
「うん。そろそろシーズンかな? と思って。沢山食べて」
「はい! 頂きます! おじさまは? 何を飲んでるんですか?」
「うん。川端さんの作品を気取って、冷酒で決めてみてる」
「うわ〜 美味しそう! 琴も飲みたいな〜」
「ふふっ 琴ももう直ぐ嫌でも飲まなければならない時だって出て来るよ。さっマスカットでも食べてなさい」
そう言っておじさまは一口大きく啜り、渋い表情を浮かべました。私はマスカットを一粒取って口放り込み、渋い表情でおじさまを見ました。
「琴は将来の夢とかは在るの?」
「今は特にはありません。取りあえず、早く仕事に就いて、母に楽をさせてあげたいです」
「そうか。そうだね。でも、それだけじゃあ勿体ない。お母さんの事を考える事は大切だけど、琴は琴で自分の人生を生きるべきだと思うよ。きっとそれがお母さんの望みでもある筈だよ思うよ?」
「そうですね。良く考えてみます。おじさま、相談に乗って下さいね?」
「うっ うん。そうだね。又、話そう」
その時のおじさまの煮え切らない答えも、その時の私にはさして気になる事では在りませんでした。
「さっ そろそろ横に成ろうか?」
「はい。服は? 脱ぎますか?」
「うん。その方が嬉しいな。確か『眠れる美女』でも全裸の少女だったよね?」
「はい、そうです。でも、今日は、パンティは履いたままで良いですか? まだ多くて、ちょっと不安で」
「勿論、構わないよ。じゃあ脱がせてあげよう。いや、やっぱり小説の様に、全裸の少女が眠っている横に、僕が寄り添った方が、雰囲気が出るね?」
「はい。おじさま」
私は服を脱ぎ、ブラを外してパンティだけに成って、ベッドに横に成りました。おじさまはその間に音楽をかけに行きました。
「ビリィージョエル AOR(Adult Oriented Rock)の巨頭だよ。この『HONESTY』って曲はとっても今日にピッタリな曲だと思う」
抑えられたボリュームで流れる切ない歌声が、静かに心に染みて来て、私は誰かに甘えたい気持ちに成っていました。そこへ全裸になったおじさまが私の横に滑り込んで来ました。私は思わずしがみ付いて、おじさまの耳に鼻を擦り付けながら言いました。
「おじさま。大好きです」
おじさまが私をきつく抱きしめたので、私のおっぱいがおじさまの胸で押しつぶされそうに成りました。でも、私にはそれがとても心地良く感じられて、私はおじさまに足を絡めてもっときつくしがみ付いたのです。
私のお腹には、時折おじさまの固くなりかけたペ〇スが当たるのですが、おじさまは腰を引いて、それを拒んでいるようでした。しかし私は絡めた足でおじさまを引き寄せて、それをお腹に擦り付けました。
「琴。ちょっと待って。これ以上は、僕が苦しく成っちゃうよ。今日は添い寝だけなんだから」
おじさまが言い終わらぬ内に、私はおじさまの唇に口を押し付けてキスをしました。するとおじさまは堰を切ったように私の唇を求めて、濡れた舌をねじ込んで来ました。おじさまの荒い息からは、甘い日本酒の匂いがしました。
その後二人は互いの舌を求め合い、唾液を:絡め合う事に陶酔しました。
おじさまの腰が前に突き出されて、私に固くなったペ〇スを押し付けて来ました。私はその硬さと熱をしっかりと感じたくなって、それを握り絞めたのです。その途端、おじさまの体が私から引き離されて、荒い息遣いのおじさまが言いました。
「琴。駄目だ。もう駄目だ。もうこれ以上は、本当に駄目だ。僕は必死で自分の中の誠実さを探しているけど、それが何所に在ったのかさえ分からなくなっている」
「おじさま? お口でしましょうか?」