匂いと口-6
「よし、今日はこれを使って行こう。体に対する負担も少ないし、見た目も可愛く見えるからね。」
おじさまの手には、深紅のテラテラと光るサテン地のリボンのような物が握られていました。
「これはシルクで出来たリボンテープで、幅7.5p長さ150pある。幅が在るのでそのまま目隠しになるし、手足を縛る事も出来る。今日は五本用意したので、目隠しと手足を縛って行きたいと思っているけど、大丈夫かな? 怖くて、無理だと思うなら、又にしてもいいよ」
私は少し怖さも感じていましたが、おじさまに身を委ねようと言う気持ちと、好奇心が勝りました。その綺麗な赤いシルクで縛られている自分を想像しての、興奮もあったと思います。
「いえ。大丈夫です」
「うん。信頼してくれてありがとう。いい子だ。じゃあ先ず手足を椅子に縛って、最後に目隠しをしよう。最後まで自分が縛られている姿を見ているんだよ。そうだ」
そう言っておじさまはデスクの横に置いてあった細長い姿見を運んできて、私の目の前のソファーとの間に置きました。椅子に腰かけて、高揚した顔の私の姿が丸見えになりました。そして直ぐに、私の右手を取り、椅子の背あてに縛り付け始めました。
「そう。背中を背もたれにピタリと付けて。」
私はお尻をモジモジと動かして、背もたれに背中を付けました。シルクがシュッと綺麗な衣擦れの音を立てながら私の手首に巻かれて行きます。
「少しきつめに巻いて行くから、痛かったら言って。ガタつくと余計な傷をつける場合があるからね。」
「はい。大丈夫です。」
そう答えながら、おじさまの手慣れた動きに「おじさまはよく女性を縛ったりしているのかしら?」そんな事を考えていました。
両の手首を背あてに縛り付けると、おじさまは、私の真正面に膝立ちになりました。そして、両手を私の膝に置き、ゆっくりと膝の内側を撫でるように滑らせ、腿の中ほど辺りで少し力を加えて足を広げました。
その日私は黒いデニムのミニスカートに、白いゆったりとしたオーヴァーサイズのTシャツを着ていました。目の前の鏡には、おじさまに足を広げられて、少しまくれ上がったミニスカートの中から白いパンティを覗かせた私の姿が映っていました。
手足を縛り終えたおじさまは、私の後ろに回り込むと、両膝立ちになり、私の肩に両手を置いて、鏡の中の私を見ました。「いやだ。パンティが丸見えなのに。。。」恥ずかしさで早まる鼓動は、両手を後ろ手に縛られて、ピンと張った乳房をも波打たせました。おじさまは私の肩の上から、鏡の中の私に向かって耳元で囁きました。
「綺麗だよ、琴」
赤いリボンで縛られた私は、自分でもそれが、美しい物のように感じてしまったのです。
「さあ。目を覆うよ。今の自分の姿をしっかりと覚えて置いて。今から君は、イメージの中だけで自分を見る事になるからね」
私はコクリと頷きながら、ゆっくりと目を閉じました。目を覆った冷たいシルクの肌触りを、心地よく感じました。衣擦れの音が、とても大きく耳に響きました。
「琴には見えないけれど、後ろは綺麗なリボン結びにしてあげよう」
「はい。ありがとうごさいます。」
「琴。自分の姿が見たいかい? それが出来る方法を君は持っているんだよ。俯瞰で見なさい。 天井に自分の目が在ると思って自身の姿を見るんだ。男には目に映る世界が全てだが、女性にはそれが出来る。やってごらん。」
おじさまは優しく私の髪を撫でながら、そう言いました。
天井の目。そう、私にはそれが出来る。と言うより、あの日も、そして今日でさえ既に、何度か頭の中にその映像はチラついていたのです。
私は心を開いてそれを見ました。濃茶の椅子に赤いリボンで縛り付けられた、パンティをむき出しにされた私。視界は美しいリボンに奪われています。
「はい。見えます」
「美しいだろう? この後に起こる事を、ずっとその目で見ていなさい」
おじさまはそう言うと、私の髪から手を放して、離れていく気配を感じさせました。数秒の空白の時間の後、おじさまは私の元へ戻って来ました。
その時、微かにおじさまの体臭を感じました。私は目隠しをされてから、確かに匂いと音に敏感になっていました。ずっと何も匂わなかった部屋の中に、微かにアロマの香りを感じたり、おじさまの息に煙草の残り香を感じたり、衣擦れの音や足音なども、低く流れるチェロの音色の隙間に感じ取る事が出来ました。そして今まで一度も感じなかったおじさまの体臭を感じたのです。
「琴。今僕はズボンを脱いできた。下半身は黒いボクサーブリーフ一枚だ。それは、この暑い日を一日過ごした蒸れた下着だ。年だから尿の切れも悪い。それも染みついているだろう。琴に今からその匂いを嗅いで貰う。出来るね?」
私はおじさまの言葉を反芻しながら、何とか理解しようと努めました「待って。私がおじさまの汚れた下着の匂いを嗅ぐの? え? 何故? 嫌。嫌。駄目です」私は何も言葉に出来ないまま、激しく首を振りました。
「ん? 嫌かい? そうか。じゃあ止めて置こうか。 でもね琴。僕は今凄く興奮しているんだ。琴にこの恥ずかしい匂いを嗅がれると思うと、とてもとても興奮して、そんな事をしてくれる琴の事が、愛しくてたまらないと思えるんだ。それにその事で、琴自身も興奮することは、保証してもいい。これも躾の一部だと思って。僕の為にやってくれないか?」
私はただ恥ずかしさのあまり拒んでしまったのであって、本当にその事が嫌だと思った訳では無い事を思い出しました。それに、そんな事でおじさまが喜んでくれるなら、ただ匂いを嗅ぐくらい出来る筈だと思いました。
「ごめんなさい。大丈夫です。少しビックリして戸惑ただけです」
「ありがとう。やってくれるんだね。いい子だ。愛しているよ」