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熱帯魚の躾方
【SM 官能小説】

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スキャンダル-1

 「あーあ、もう帰っちゃう。」「帰りたくないなぁ。」「このまま、移住しちゃいましょ?」「もう何泊かしたいなぁ。」飛行機を待つ那覇空港の出発ロビーで、沙莉が呪文のように繰り返す。
「楽しいほど短く感じるけど、たくさん思い出も出来たし、無事に帰るまでが旅行だよ!」「はぁい。」生返事が返ってくる。
 旅行疲れか機内では吸い込まれるように眠ってしまった。

 空港で預けた荷物を受け取ると出口のところまで美羽が迎えに来ていた。「お姉ちゃーん!御主人様〜!」大声で呼び、手を振る。
「おいおい、まずいだろ!」「はーい!」車中で土産話に盛り上がりながら、私は近くのホテルで降りた。一泊して帰る予定だ。二人はそのまま自宅に帰った。

 数日後、何気にネットを見ていたら「業界衝撃!中山沙莉に新たな恋人発覚か?」
 旅行中にあちこちで隠し撮りされていたようだ。SNS掲載から写真が拾われている。ビーチ、飲食店、土産物屋、美ら海水族館、空港。かなりヤバい状況だ。私の顔にはモザイクがかけられているが、腕を組んだり、沙莉が抱きついている写真まである。水着姿まで初公開だ。
 テレビを観ると朝のバラエティ番組で既に流されている。私の存在と美羽を挟んだ三角関係、沙莉のビキニ姿初公開がもっぱらの話題だ。
 店の電話のベルが鳴る。「週間◯◯ですが、以前中山沙莉さんがそちらで住み込みアルバイトをしていたそうですが…。」どこから調べたのか、同じような電話が連続してかかる。
 慌てて店を閉めた。表の門の前に記者っぽいのが二〜三人見える。急いで家に籠もった。インターホンが鳴るが、電源も切った。
 知らぬ存ぜぬで押し通す以外、方法が見つからない。私の顔にはモザイクがかかっていたが特定されているかもしれない。

 私のことはいいが沙莉が心配だ。これからの仕事に悪影響を及ぼすかもしれない。美羽にLINUで連絡を取ると、自宅にも記者が来て車で出勤したらしい。上司に全てのことを話して、会社で匿って貰っているから大丈夫と返って来た。
 沙莉は泊まりのロケで、記者に見つからないように都内のホテルに移動中だそうだ。

「只今、各局に中山沙莉さんの所属するスーパーモデルプロダクションズからメールが入りまして、明日の15時より記者会見をするようです。各社一名まで、質問は一人二回まで、他に条件が書かれてますが割愛したいと思います。」

 そんな?スキャンダルに向こうを張るというのか?無茶過ぎないか? 

 沙莉の記者会見は各局生放送で流れた。会場は何処かのホテルの大広間で、黒いシックなドレスを纏った沙莉が登場すると、「おお〜!」と歓声が上がり、「皆様、こんばんは!お騒がせな中山沙莉でーす!」と沙莉が大きな声で笑顔を振りまいて挨拶すると記者達から拍手が起こった。こんなことあるのか?スキャンダルネタの記者会見だぞ。不思議な光景を見ているかのようだ。
  
 記者から質問が飛ぶ司会の女性が「◯◯社様どうぞ!」何故か質問する側の記者のほうが沙莉の毅然とした態度に動揺して見える。
 
「この男性はどういう方でしょうか?いつからのお付き合いですか?」「はい!一般人のかたなので個人情報は公開出来ません。お付き合いは一年ほどになります。」「年齢とかお仕事とか、俳優さんで言えば…。」「個人情報になるのでお答え出来ません!」

 次の記者へと替わる。「前の女性ともお付き合いされてるんですよね?三角関係ですか?ファンの方には大きなショックだと思いますが…」
「二つの質問が入ってますね。一つずつお答えします。ある女性とはご存知の通り同棲してます。親友であり恋人未満です。ふざけたり、酔ってキスしたりもしますが、肉体関係があるわけではありません。彼女も彼のことはよく知ってますし、敬愛もしてます。三人で一緒にお風呂に入ったりもしますよぉ。えへっ。」沙莉が悪戯っ娘のように舌を出す。
 釣られて会場がざわついた。
「私はアイドルではなく、女優でありモデルとしてお仕事をさせて頂いております。二十五歳の大人の女性でもあります。この先も勿論、恋愛もしますし、結婚をして出産や育児をするかもしれません。それと仕事は別のものです。私を応援して頂いているファンの方は、私の私生活も温かく見守ってくれるはずです。」
 
 次の記者へと替わる。「お仕事に悪影響が出るとは考えないのですか?」「考えません!」会場がどよめく。「世の中、スキャンダルやらバッシングやら、他人事を笑って楽しむような人間性の低い人達もいるでしょう。そんな人達にどう思われようがどうでもいいことです。」
 会場が静かになった。「私達は別に犯罪を犯している訳でもなく。不貞行為をしている訳でもありません。なのに、正に鬼の首でも取ったかのように騒ぎ立てる人達がいるのは、何故でしょう?どちらかと言えば、恋人や好きな人、大切な人の存在は祝福されるべきことです。何の問題も無い私事に首を突っ込み、批判や嘲笑をするのは、妬みや嫉妬の感情からだと解釈しています。それは、自分自身を不幸にする感情なので、ちゃんと切り替えて祝福する気持ちで観てください。ね!」テレビの向こうの視聴者に向けている。

 次の記者に替わる。段々と沙莉に対して擁護的になってきた。「いや〜、私も含めてですが、ファンの男性には非常にショックだと思いますが…。」会場に笑いが起こる。


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