お母さんを-4
「それは、こんなこと、K子ちゃんには黙っていますが…それよりK子ちゃんとはもう会うこともないんじゃ…」
聞き違えたのだろうと思い、あくまでも『K子には黙っていてください』と念を押された前提で応えるボクをお母さんが遮ります。
「高校になったらお勉強も難しくなるでしょうから、お月謝も上げさせてもらいますね」
「月謝? というと、家庭教師のことでしょうか?」
「ええ。いただいたご返事にも書いてなかったので。でも、受けていただけますよね?」
お母さんを押し倒しておいてもはやボクには四の五の言う資格はありません。
「先生は日曜日はいつもこちらにいらっしゃるのですか?」
「日曜日はここでだらだらしてますが…」
お母さんが視線を一瞬中空に泳がせます。
「ほかの曜日でご都合のよい日はありませんか?」
「…あとは…何もないのは水曜日…」
「そうなのですね。日曜日も夫は仕事に行くことが多いのですが、たまには家におりますので…それでは、水曜日にお願いいたしますね」
ボクが何かと煮え切らない質なのを見抜いているように、お母さんが一気に話をまとめにかかっています。
「先生は手際がよくていらっしゃるから、論文を書くのと家庭教師と掛け持ちしても大丈夫ですよね?」
「『論文』はどうにでもなるのですが…『手際』…ですか?」
『手際』とは、まさか先程の強姦まがいの一連の流れのことでしょうか。ましてや『手際がよくていらっしゃる』などとは…。
「そう。手際…。いざというときの手際がいい…って思ったのですけど」
お母さんが今度は明らかにいたずらっぽく笑っています。パンティを脱がせるときにお母さんがお尻を浮かせて協力してくれたから…のような気もしているのですが。
「主人も先生に、是非そのまま家庭教師をお願いしたらいいって申しているんです。四月に昇進してお給料も増えましたし。それで…もっと忙しくなったのよ」
顔はにっこりと笑っているけど、得も言われぬ迫力を醸し出しながら環境の変化を伝えてくるお母さん。言葉遣いもいつの間にか敬語ではなくなっています。
「じゃあ、水曜日の、そうね…。K子が学園から帰って来て、ごはんを食べて、シャワーも浴びて…夜の七時からでいいかしら?」
「わかりました…」
ボクは呆気なく引き続き家庭教師を引き受けることになりました。K子ちゃんの家庭教師を続けさせた方がかえって秘密は守られると考えているのでしょうか…。
「では来週の水曜日からお願いしますね。よかったら先生もうちでごはんを食べていただいてもいいんですよ?」
「はぁ…。あの…それで…」
「大丈夫です。今日のことはK子には黙っていますから。その方が先生もあの子に顔を合わせやすいでしょ? あと…先生にカノジョはいなさそうってことも」
「えっ?」
予想外の答えにボクは戸惑います。
「いらっしゃらないのでしょ? カノジョ」
「ええ…まあ…」
「あの子ったら先生のこと、ちょっと気になってるみたいなんですよ。カノジョがいないのはあの子にはよい知らせなんですけど、なにせ高校入りたてですし、まだ色恋の話は早いでしょ?」
K子ちゃんがボクにカノジョがいるかどうかを気にしているなんて本当なのでしょうか? 色恋の話が早いというのなら、むしろカノジョがいるということで口裏を合わせた方がまだよさそうなものですが、実際、カノジョなどいないのは図星なので差し出がましいことも言えません。それにしても、お母さんはなぜボクにカノジョがいないと思ったのか…。
襲い掛かってきたぐらいだから性欲が溜まっている…それともボクが呆気なく果てたから女性経験は大したことはない…そんなことからの推測でしょうか…。お母さんがアクメに達したのかどうかも分からないまま自分勝手に果てていたのですから、女性の扱いにも慣れていないからカノジョなどいるはずもないと見切ったのかもしれません。
「カノジョがいらっしゃったりしたら、わたしも寝ざめが悪くなってしまいますから…。そうでしょ、先生…。カノジョがいらっしゃるかもしれない男の人のお部屋にのこのこ現れるなんて…」
お母さんが目を伏せてそんなことを言います。
「先生のお家、覚えちゃった。水曜日は一日何もないのでしたわね? また、お邪魔しますわね」
ボクは黙ってただ頷いていました。
(『またお邪魔します』って…。お母さんがまたボクの部屋に来るということは…そういうことですよね…。水曜日はK子ちゃんの家で晩御飯もいただけると…。食欲、性欲を満たしてくれるというお母さん…。あとは、睡眠欲か…)
水曜日の夜はぐっすり眠れるに違いありません。
「じゃあ、失礼いたしますね」
にこっと笑ったお母さんの白い歯が綺麗です。ボクが大量に放った精液を膣の中に溜めたままで。白いパンティにも滲に出しているはずなのに、こうも清楚な印象を与えることができるとは。
お母さんが錆だらけの階段を下りていきます。踏み板を鳴らすヒールの音が軽やかに聞こえます。ボクは(お母さんもアクメに達したのだろう…)と思いました。そして『ありがとうございました』と言われた意味もわかったような気がしました。いや、(そうであってほしい)という気持ちの方がまだ勝っていましたが…。