愛撫されて-4
キッチンでレイを抱擁した渡部は、ひと呼吸おくことにした。
キッチンからひと続きになっているダイニングルームで、渡部とレイは隣り合わせに座ってグレープフルーツジュースを飲んでいた。
「レイちゃんは十六歳。新体操の才能は大したものだ。将来的に、世界にはばたく可能性がある。ぼくは、そんなレイちゃんの進路を邪魔するつもりはない。できれば、できれば、ぼくと交際することで、レイちゃんの世界がより豊かなものになってほしいんだ。バックアップしたいと思っている」
「渡部先生、わたしは幼いから、大人の付き合い方がわかりません。先生のことは好きだけど」
「レイちゃん、そう言ってくれてうれしいよ。十四歳の年の差はしだいに気にならなくなる」
「先生、わたし……」
「先生って言わないで。紀夫さんって言ってごらん」
「紀夫さん……」
渡部は立ち上がり、レイの肩に手のひらをおき、ふたたびキスをした。
「レイちゃん、目をあけてごらん」
目を開けると、渡部の顔があった。やさしい眼をしている。信頼できる眼だ。
「レイちゃん、立って」
レイは、渡部に抱擁されるのだと思った。抱擁してほしい。
立ち上がったレイのからだは宙に浮いた。抱きかかえられたのだ。
えっ? 何を?
「レイちゃん、向こうでゆっくり愛しあおう」
「先生、紀夫さん!」
レイは脚をバタつかせようとしたが、頬をつよく吸われる。吸われたことで、抵抗は弱まった。少女のからだをかかえるちからは強い。
わたしは愛撫されたがっているの?
「嫌なことはしないから。安心して」
寝室に運ばれて、レイはベッドに寝かされる。
怖い。セックスなんて怖い。レイは逃げようと思ったが、渡部はおおいかぶさってきた。頬にキスされ、頬っぺたを手のひらで挟まれ、唇を奪われる。
つよく吸われる。刺激的だ。
「レイちゃん、口をあけて。もっと気持ちよくなるから」
素直に從う。
舌が入ってきた。少女の舌に、舌が絡まる。
渡部は昂奮。なんてうぶな味なんだ。幼さを感じる唾液じゃないか。
レイは、律動してくる舌に、戸惑いと怖れを感じながら、性愛にいざなわれていた。渡部をもっと知りたいと思った。