第五十五章 再会-1
【啓介と同居 四ヶ月目】
【20●1年4月6日 PM10:00】
翌日の夜。
ガレージで。
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車がガレージに着いた時、時計は十時を示していた。
遅い帰宅で心配顔の恵は、車の窓から見えた家の明りがついていない事に少しばかり後悔していた。
早く帰ろうと言う妻に夫の武がたまの外出だからと言って主張したので、夕食も外で済ませた二人であったが、何か義父に申し訳無い気持ちで一杯だった。
それと、もう眠っているかも知れない義父の顔を一目見たかった恵であった。
「あー、疲れた。クタクタだよ・・・」
武はそう言うと、さっさと着替えを済ましベッドに潜り込んだ。
「お風呂・・入らないの?
それにお義父さんに挨拶しなくちゃ・・・」
「いいよ、どうせもう寝てるよ。
それに明日早いから風呂もいい・・・よ。
おや・・す・・・み」
そして直ぐにイビキをかき始めた。
恵は呆れた顔をしていたが、クスッと笑うと夫の頬に愛おしそうにキスをした。
本当に久しぶりのデートであった。
結婚前の頃のように二人は新鮮に寄り添い、休日をたっぷりと楽しんだ。
夜は高級ホテルのセミ・スウィートで夫の愛を幸せ一杯に受けとめる恵であった。
義父とは違うセックスの喜びがあった。
自分の心が帰っていく気がするのだ。
昨夜の余韻がまだ身体に残っている。
昨日だけは義父の事を頭から消していた。
夫とのひとときを乱したくなかった。
それが自分に出来る精一杯の償いなのだ。
愛していると思った。
だが、二人を同じ日に愛するのはやはり辛い。
昨日は武だけのものになった。
明日はどうだろう。
夫の寝顔を見つめながら、そんな事を思う自分が不思議に感じた。
この不条理な想いに迷いが無くなっている自分がいる。
少しずつ変わってきているのだろうか。
もう一度、寝顔にキスをすると恵は部屋を出ていった。
義父の所にお土産だけでも置いてこようと思う。
それは口実であったが。
もしかして起きて待っているかもしれない義父に一目でも会いたかったのだ。
その前にシャワーを浴びる事にした。
夫の温もりを消しておきたかった。
それが恵の中で作られた暗黙のルールのような気がする。
夜、義父の家にいく。
何かそれが、物凄く大それた事に思えてくる。
恵は心を決めると、入念に身体を洗うのであった。