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妻を他人に
【熟女/人妻 官能小説】

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始まり-3

「だめ…………」

 唇同士がまさに触れ合おうとしたそのとき、ゆきはWを突き放し抱擁から逃げた。

「…………ご、ごめんなさい。そんなつもりはなかったんです……」
 かつて出張先のホテルで強引に迫られたことを思い出した。その気になれば男の腕力は女のそれをいとも簡単に凌駕する。震えるゆきに対し、しかしWの態度はあくまでもジェントルだった。
「すまないOさん……君が欲しいと、思ってしまった……。こんなときに……私はやはりだめな男だな」
 自嘲気味に笑うW。ゆきの恐怖と疑心暗鬼の視線に気付いたのか、優しいトーンで言葉を繋ぐ。
「許してくれ。私は君と心が通いあったと勘違いし、愚かな過ちを犯すところだった。気づかせてくれてありがとう」

 誠意に溢れた視線でゆきを見つめ頭を下げるWに、ゆきはひとまず胸をなでおろす。

「いえ……。大丈夫です……」
「本当に申し訳なかった……Oさんのただ一人の味方でなければならない私が……」
 あのWが力なく肩を落としている。今日はこの人のこんな姿をよく見る。
 少し、申し訳ない気持ちになった。
「あの……! 勘違いではありません。私もWさんとは心が通じ合っていると思ってます……。Wさんにおっしゃっていただいたこと、嬉しかったです。でも……ごめんなさい。Wさんのお気持ちに応えることは、今の私にはできません……」
「いいんだよ。謝ることなんかない。悪いのは自分の感情を制御できなかった私だ。あらためて申し訳なかった」

 ゆきの心は警戒心と安堵の狭間で揺れていた。
 同時に、普段のWらしからぬ憔悴した姿に自らを重ね合わせ、哀れにも感じた。

 そもそも美魔女グランプリへの応募から数ヶ月、ゆきは少しずつまた彼に信頼を寄せるようになっていた。
 過去の関係などおくびにも出さず他の同僚と同じ一人の社員としてフェアに接し続けてくれたW、通常業務に加え美魔女の取材や撮影で多忙なゆきを影に日向にサポートしてくれたW、週刊誌の不倫報道を裏で手を回し直前でストップしてくれたW、Vに脅され彼の「顧客」を性接待することになったゆきを優しく慰め励ましてくれたW。

 Wさんが居てくれてよかった――心からそう思っていた。
 彼にキスを迫られたとき、ここで逃げて寄る辺を失うことを恐れた。受け入れねばならないという考えが一瞬、頭をよぎった。しかしできなかった。気がつけばゆきはWを押し返し、彼の気持ちを拒否した。自分は大変な選択ミスをしてしまったかもしれないと恐怖した。
 果たしてWは、狼狽するゆきに頭を下げ素直に謝罪してくれた。

「やはりOさんは賢明な女性だ。私の身勝手な振る舞いがもし許されるならば……これからも私を支えてほしい」
「もちろん私もそのつもりです。Wさんをお慕いする気持ちは変わりません……。さんざんご迷惑をかけてしまったWさんの優しさに甘えたい気持ちが、実は私にもありました……」
 これは本当だ。ゆきもまた彼の胸に甘え、いっときの安らぎを求めたのは否定できない。
「そう言ってくれて嬉しいよ。誰にだって甘える相手は必要だ。どうか安心して甘えてほしい」
「ありがとうございます……」

 思えば不倫に明け暮れた時期でさえ、Wはいつでも紳士で優しかった。始まりは半ば無理やりだったし、当時はゆきの心が不安定でWとの関係にもネガティブな感情が先に立った。しかし振り返れば彼との時間そのものは心地よいものだったのだ。もちろん行為自体も。そうでなければ三年近くも続くわけがない。
 それにもしWと男女の関係になっていなければ、自分はあのVにたった一人で立ち向かわねばならなかったかもしれないのだ。身を切るような彼との不倫も、ゆきの人生には必要な出来事だった――そうこじつけたくなるほどには心を許していた。

 怪しい空気が一掃されたホテルの一室。

 Wは立ち上がり、メールや電話で各所に事務連絡をしている。忙しい合間に来てくれたのだ。
 今の出来事が逆に、Wへの信頼を確固たるものにした気がする。
 よかった。
 この人となら、今晩からはじまる地獄も乗り越えていける――。

 仕事モードに入ったWを横目に、ゆきも今夜の接待の身支度をするため立ち上がった。
 トイレで浣腸を肛門に差し挿れ、大腸の内容物を排泄する。
 バスルームに入り身体を軽く流す。昨晩夫に中出しされた膣を丁寧に洗浄し、腋の下、二の腕、すねのムダ毛を剃る。

 一生懸命になって私は、いったいなにをしているんだろう。

 男性に抱かれる前にこうして「身体の準備」をする時間が、ゆきは好きだった。
 心を許した異性との甘いひとときを夢想し、頬を染め、胸を高鳴らす時間。
 相手の男性が自分の美しさに興奮し、下半身を固くしてくれるのが楽しみだった。
 そんなドキドキが、今はまったく感じられない。

 身ぎれいになったゆきは、Vに指定された純白のブラジャーとショーツを身につける。
 鏡に向かい、ため息をつく。
 そこに立つ自分の姿は、嫌になるほど美しかった――。

  *


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