秘書の仕事~忘れ物を届けに-2
何とか間に合い、冴子は一安心した。
こんな時間に電車に乗るなんて初めてかもしれない。そこそこ人はいるものの通勤時とは違い空気は穏やかで余裕がある。空席も少しあったが子供を連れたお母さんやお年寄りが多く、この後誰か座るかもしれないと思い、冴子は入口付近のポールにつかまって立っていることにした。
しばらく窓の景色を眺めていると、誰かが隣に立った。そして冴子に体が触れるくらいピッタリとくっついてきた。
『何…?まだそんなに混んでいないのに…』
冴子が不思議に思っていると、臀部に違和感を覚えた。隣にいたのは40代ぐらいの男で、臀部に触れているのはその男の手だというのがわかった。
『痴漢…!?』
冴子は体が震え、どうしたらいいかわからずされるがまはまになっていた。スカートの中に手を入れられそうになったところで我に返り、男の手を払いのけた。だがそれでも男の手は冴子へと延びていった。
「やめてください…それ以上するなら大声を出しますよ?」
冴子は震える声で男に言った。だが男は手を止めようとはしない。そしてスマホの画面を冴子に見せてきた。
「これってアンタのことだろ?自分から言っておいてそれは無いんじゃないか?」
冴子は男のスマホを見ると、そこには掲示板と思われる画面が写されていた。
『痴漢願望のある変態OLのSといいます。14:15発のT駅からN駅の間、痴漢してくれる人を募集しています。
わたしはショートボブに紺色のスーツ、ミーコちゃんのキーホルダーをつけた鞄を持っています。
嫌がっても絶対にやめないでください!待ってます♡』