《魔王のウツワ・2》-1
朝…
俺にとって朝は闘いだ。
いや、戦争と言ってもいいだろう。
目覚ましが鳴った。時頃は6時前。開戦の合図。
まずは着替えと身嗜みを整える。
その後、洗濯物を洗濯機に放り込み、洗剤&柔軟剤を入れて、スイッチを押す。
ガガガ…と何時壊れてもおかしくない我が家の老兵(ちなみに我が家は未だ二槽式…)は、その命を賭し、一心不乱にドラムを回す。
…死ぬなよ…
思わず敬礼してしまいそうな頑張りだ。
それが終われば朝食作り。ハムや茹で卵など適当なメニューを手早く作り、同時にレンジで手抜き食品を暖める。
そのおかず類を弁当箱に詰めたら、主食の米をよそって完了。
これを二人分作る。
「おい、起きろ」
最後に玄関付近で倒れている屍を足で小突く。
「蹴るなぁ…」
足下で母親という名の屍が蠢いた。
「朝は机の上、昼は冷蔵庫。出来たら、洗濯物を干しといてくれ。いってくる」
全てを手短に答えると屍は足をバタバタと動かした。
手を振る代わりなのか…
「いってきます」
返事無し。屍は二度寝に入った模様。
※※※
学校はいつもと変わらない。
変わらないヒソヒソ声。
変わらないクラスの雰囲気。
何事も無く、いつも通り、滞りなく進む日常。
よく厭きないもんだ…
※※※
さて、今日の飯を食べる場所はどうしようか?
いつもの場所が空いているといいのだが…
そんなことを考えながら、誰もいない自販機の前に立って小銭を入れ、赤い光が宿った牛乳のボタンを押す。
ガシャガシャと音を立て、牛乳が落下した。
「…あ、あの…」
「ッ!!」
か細い、小さな声に思わず身体が強張る。
背後を見ると昨日の女がいた。
正直、ビビった…
気配も無くて、言っちゃ悪いが幽霊かと思った…