第五十三章 休日3-1
【啓介と同居 四ヶ月目】
【20●1年4月5日 PM11:00】
その日の夜。
啓介の寝室で。
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男はボンヤリ天井を眺めていた。
プリントされた合成材の木目模様が渦を巻いている。
そこに描き出されるのは天使の顔ばかりであった。
笑った顔。
泣いている顔。
そして、例の眉をひそめる表情。
(タバコは健康に良くないですよ・・・)
煙たそうに言う恵の顔が懐かしかった。
まだ時折、吸いたくはなるのだが何とか我慢が出来ている。
意外と自分の意志の強さに驚いてはいたが、やはり天使への想いのせいだと苦笑してしまう。
恵のためならどんな事にでも耐えていける気がする。
だが。
たった半日いないだけで、こんなにも辛いものなのか。
この寂しさには、まいっている。
出かけようかとも思ったが何か億劫で終日、家にいた。
それでも明日は出かけなくてはいけない。
恵達に気を使わせたくはない。
それと幸せそうな二人を見るのが辛いのだ。
こんなにも嫉妬を感じるなんて。
自分でも信じられなかった。
これが自分に対する罰なのだろう。
慣れなくてはいけない。
休日と夜は武のものなのだから。
平日の午前十時から夕方までが許された時間である。
啓介は引き出しに大事にしまってある青い封筒を取り出した。
何度も読み返している。
天使からの手紙を。
これからも仲良くして下さい。
私もキツイ?女にならないよう心掛けます。
この二行から啓介の恋が始まった。
秘かに寄せていた恵への感情が甘い蜜をだいた花として咲いたのだ。
二人は今頃どうしているだろう。
恵は幸せの微笑みを浮かべているのだろうか。
今日は眠れない夜になりそうだ。
ふと、そう思う啓介であった。