Breather-2
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ーーーーフィガロ城内
ーーーー図書室
「・・・・あーーーーっ、もう!!」
部屋の中央に据えられたソファの背もたれに身体を預けながら、
フィガロ王妃セリスは天を仰いで長嘆息というには程遠い声を上げていた。
公務中ではないため、普段城内で使用している水色のコントラストソリッドレースのソリッドドレスを身に纏っている。
化粧を控えめにし、装飾品を身に着けていないものの、ウェーブがかった金髪を自然に垂らしているだけで十分に絵になる姿だった。
そんな彼女の姿を見つめながら、正面のソファに腰を下ろす2人の侍女は思わず顔を見合わせる。その瞳と表情には明らかな”同情”の色が浮かんでいた。
夫である国王エドガーは現在公務で他国に出向いて城を不在しており、不在間の国務は儀礼的な分野も含めてセリスと大臣達が処理していた。
これまでのセリスであれば夫不在の間隙を縫って港町サウスフィガロや周辺に”お忍び“で足を伸ばし、知己に会うなり買い物するなり”単独行動“という名の息抜きを満喫していた筈であった。
だが今回セリスはエドガーから城から私用で”お忍び“、しかも”単独行動“を慎むようきつく厳命されていた。
しかも大臣や侍女といった身内にも直接申し渡しておくような徹底ぶりだ。
これは最近までセリスの単独行動の頻度が多くフィガロ王妃という地位の重さから見ても由々しきことであると侍従や大臣からエドガーに報告されたことに端を発している。
ましてエドガー自身、そうしたセリスの行動を何度も目にしている上、彼女が結婚直後から見ても一層艶かしい雰囲気を醸し出していることに一抹の不安を感じてきている。
それはエドガーが彼女とベットを共にした時に感じる裸体の反応や肌の潤いといった面からも補強できるものだった。
無論エドガーがセリスに対して、そうした疑念を直接確認したことはない。
だがセリス自身、単独行動を通じた夫以外の男達との”出逢い”の事実もあるため、夫の態度から彼が何かを感じているのではということを悟っている。
だから国王夫妻として求められる公務以外にセリスを城に釘付けにしておきたい夫の考えも分かっているのだがーーーーー