Breather-14
その時、
ーーーーーカタン・・・ッッ
「 !!!! 」
別の区画の奥から突然響いた小さな物音にセリスの胸はドキリと高鳴り、気づけば傍らに立つ領主の胸に顔を押し付ける形で身体を寄せてしまっていた。
セリスとしては意図したものではない無意識の反応だったが、ある意味領主の告白に対する回答のようでもあった。
「・・・・・・・・」
「・・・・・ご心配なく。多分積んであった箱がずれただけのことでしょう」
自分の耳朶を擽るような独特のトーンでの領主の呟き。
ふと気づいた時、セリスの背中には固い壁、眼前には衣類越しに領主の胸板と双方に挟まれる形になっていた。
緊張の為かやや身体を固くしつつ呼吸を整えるセリスの頬に、微かに上下する肌の温かみと筋肉特有の張り具合が触れている。
「やはり、貴女は・・・・・」
「えっ・・・・・・・」
領主の呟きに、思わず顔を動かしたセリスの眼前に領主の顔が迫ってきていた。
「な、何をするんです・・・・っ」
目を瞑り顔を背けるセリスに構わず、領主の唇はセリスの頬に触れた。
いやいやと首を振り領主の腕と壁の間から逃れようと身体を動かし両腕に力を込めるものの、セリスの予想以上に領主の腕の拘束は強く微動だにしなかった。
首を振るセリスが一瞬動きを止めた瞬間、
彼女の唇は領主のそれに重ねられた。
セリスの記憶の奥底からかつて領主と交わした口づけの感触がまざまざと蘇り、彼女の目は大きく見開かれる。
いつしか両唇は領主の舌によってこじ開けられ、その舌先が互いに触れ合っていた。