Breather-10
ーーーーパタン・・・・・
「・・・・・・」
1人きりになると、セリスの思考はそれまでの退屈からの倦怠ではなく、もうすぐ顔を合わせることになる領主の”真意“に向けられた。
好色で知られたフィガロ先代王の親友でありセリスが身体を重ねた男達の1人。
先に身体を重ねた経験のあるジドールの若き大富豪アウザー2世を通じて王妃セリスを知るや、
彼女をあしらったブロンズ像と特注の黒いウェデイングドレスを用意し、
自分の館へのエドガー夫妻の来訪時にそれらを進呈と同時にセリスの肉体を絡め取り、惑わし、そして1つになった。
セリスの相手をしてきた他の男達の中でも年配の部類に入るはずだったが、
その優雅な雰囲気と所作、そして鍛えられた肉体が見た目よりも彼を若く見せていた。
今から思い返しても、欲望の焔を瞳に宿しつつ迫ってきた領主には、いつしかセリスに抗うことすら忘れさせる程の威力、技そして力強さがあったように思う。
(・・・・本当にあの時以来ね)
今回の領主の来訪。しかもエドガーではなくセリスに対するご機嫌伺い。
その意味するところは。
(まるで私が”籠の鳥“であることを見透かしているような・・・・・)
前回の時のことを思い出す度に、彼が求めているものが以前同様にセリスならば、その時はーーーーーー
(どうなんだろうか・・・・駄目よセリス、顔を見てもいないのに色々想像するなんて)
自分で自分をたしなめつつも、心の奥底に背徳の香り漂う刺激を求める意識が存在していることを改めて自覚するセリスだった。