side 優依 44-1
橘家玄関
小百合の母親が真治を連れてやってきていた
「ごめんください」
「はーい」
優美が玄関に赴き扉を開けて
「いらっしゃい 真治くん」
「こんにちは」
「橘さんの奥さん いつもありがとうございます」
「いえいえ パートの時間は?」
「はい 今から出かけところです」
「真治くんはお昼ご飯は?」
「食べさせてきました」
「じゃあ、おやつの時間でいいですか 食べさせるのは」
「いいんですか?」
「えぇ…優依がなにか作るみたいで…」
「ゆいちゃんといい くみこちゃんといい
料理が出来る子が周りにいたことで
刺激になったみたいで小百合も徐々に」
「さゆりちゃんの料理は金曜日にみてますが
手際もよかったですし上達はしてると思います」
「わたしとしても助かってるもので…
やっぱり くぼたさんが影響してるのかなって」
「優依もくみこちゃんも…そうですね
彼に食べさせたいからがきっかけでしたから」
「ありがたいものです」
(でも、えっちしてることは言えないな)
優美は内心困ったように思ってしまってる
「さゆりちゃんは夕方 ここに来る予定でよろしいですか?」
「はい その予定みたいで 小百合に真治を引き取って
帰宅して貰うつもりで」
「わかりました」
「それでは わたしは仕事に」
「鈴木さんも無理なさらずに…」
「ありがとうございます」
小百合の母親は優美に頭をさげつつ
橘家をあとにして仕事に出かけるのだった
小百合の母親を見送ったあと
「真治くん 居間に行く?」
「うん」
真治を連れて居間に行くと
優花がやってきて元気よく
「しんちゃん いらっしゃい さゆりおねえちゃん
むかえにくるまであそんでようね」
「うん」
真治の手を引いてテレビのところに座る
二人がアニメを見ているのを見守りつつ過ごしていると
優依が2階から降りてくる
「お母さん 真治くんきたのね」
「うん お昼は食べたみたいだから」
「じゃあ おやつでもつくろうかなと…」
「優依 何作る予定?」
「動画サイトみてて面白そうだった
メロンパントースト 簡単そうだった」
「どんな感じなの?」
「バターをとかしたあと
薄力粉と砂糖を混ぜてこねたものをパンの上にぬっていき
メロンパンの模様をいれてオーブンで焼くだけ」
「簡単なのね 分量とかは携帯で確認すればいいよね」
「うん そう おやつにはもってこいでしょ?」
「そうだよね 甘いものが好きなら上にシロップとか
かけてもいいし」
「と言うことで いま2時前だから
3時頃に作ることでいいかな?」
「優依がする? わたしがしてもいいし」
「わたしがするから あと 明日はチャーハン?」
「その予定…」
「お母さんも動画確認したら?」
「うん そうだね 簡単に作れそうなレシピ選ぶわ」
「今日はおさむくん どうしてるのかな」
「さゆりちゃんだし 問題はないと思うけど」
「ゆきちゃんが部屋に来なければかなぁ」
「あの子…4日のときはいたんだよね?」
「うん…今日はふたりきりにさせておいてるのかなって
気になってしまう」
「あとでさゆりちゃんに聞くしか」
「そうね」
「そう言えば くみこちゃんとしおりちゃんは
今日はなにしてるの?」
「くーちゃんはともかくとして
しおりちゃん ひとりでいるのかどうかだよね?」
「うん お母さんがお医者さんだと…」
「仕事なのかなぁ 確認してみる?」
「うん」
優依は携帯を取り出すと
詩織にLINEを送る
ゆい 「しおりちゃん いい?」
しおり「うん? どうしたの?」
ゆい 「しおりちゃん 今なにしてるのかなって」
しおり「いま くみこちゃん 家に来てくれてて
さっき お父さんにお昼ご飯
サッポロ一番 味噌でアレンジしたの作ってあげたところ」
ゆい 「そうなのね おじさんは喜んでた?」
しおり「うん 泣かれちゃった」
ゆい 「うちのお父さんも同じだった 娘の手料理嬉しいんだよ きっと」
しおり「これも くみこちゃんのおかげ」
ゆい 「くーちゃんいるなら…いいかな」
しおり「どういうこと?」
ゆい 「一人でいるなら家に来ない?と言おうとしたから」
しおり「あ…ありがと それで ゆいちゃんちで
なにかする予定?」
ゆい 「真治くんもいるしおやつにメロンパントースト作ろうかなと」
しおり「メロンパントースト? 気になる
くみこちゃんにきいてみる」
優依はしばらく返信を待っていると
しおり「くみこちゃんも一緒にそっちに向かうことになった」
ゆい 「おじさんはいいの?」
しおり「お父さんは書斎で仕事してるみたいだし
わたしがいなくても問題なさそう」
ゆい 「じゃあ、待ってるね」
しおり「うん すぐいく」
詩織とのLINEを終えて優依は優美に
「お母さんは仕事ぽい お父さんはいたけど
書斎にいるみたい お昼ご飯はくみこちゃん手伝いに来てくれてて
サッポロ一番のアレンジつくったみたい
お父さんに泣かれたとか うちのお父さんとおなじだなぁ」
「娘の手料理は嬉しいものだもん
で、ふたりは来るの?」
「うん すぐ来るって」
「わかったわ」