冴子の秘密-6
鬱憤を晴らすことができ、快感を感じた冴子は恍惚な表情を浮かべていた。
だが徐々に冷静になってゆき、社内で、しかも社長室で何てことをしてしまったのかと後悔した。
とにかくバレないようにしないと。
机の角は持っていた除菌シートで丁寧に拭いた。
そして部屋に漂う匂いをごまかすために、同期の子からもらったアロマポプリを置いた。本当は部屋に飾るつもりだったが仕方がない。
これで何とかごまかせるだろう。
冴子は社長室の鍵を閉め、足早にその場を去った。
***
「社長、おはようございます。」
「おはよう、昨日はありがとう。君がいてくれると助かるよ。」
わたしの気も知らないで…結局昨日も何も言ってくれなかったわね。
いつもなら怒りに震えるところだが今日は違った。
社長がいつも座っている椅子に机。それは昨夜わたしが淫らな行為を行った場所だ。
そうとも知らずいつも通りそこへ座り仕事をしている社長がとても滑稽に見えた。
「ところで西島くん。」
「は、はい!」
「今朝から思っていたが…この部屋何かいい匂いがするな。何かしたのかい?」
「えっ…ええ。アロマポプリを置いてみたんです。リラックス効果のある香りで、少しでも社長の疲れが取れればと思いまして。」
「そうか、ありがとう。女性ならではの発想だな。うん、書類もOKだ。」
そう言って社長は外出先へ向かうため部屋から出ていった。本当のことなど言えるはずもなく、それらしい理由を並べて何とか誤魔化した。
それと同時に、冴子の中で何かが弾けた。
それに気づいた冴子はくすりと笑い、いつも通り業務に励むのだった。