冴子の秘密-11
「あの…どういうことでしょうか?」
「お前は清掃したつもりだろうがそこまで念入りにはできていないだろう。しかも体液が備品にかかったとなれば月日が経つにつれて変色する可能性もある。
そうなる前にお前が社長室で何をし、何に触れたか把握しておきたい。場合によっては業者に入ってもらったり備品を買い換えたりするからな。」
岡野は顔色一つ変えず冷静に言いあげた。
その姿もあってか冴子は岡野の言い分をあっさり受け止めた。
「わかりました。書いてみます。」
「覚えているなら日付も頼む。」
書きづらいだろうからと、岡野は会議室を出ていった。
岡野は昨日のわたしの行為を咎めるようなことは言わなかった。こんなときまで部下を気遣えるなんてと改めて尊敬したと同時にそんな上司の思いを無駄にした自分を恥じた。
とにかく今は言われたことをやろう。
冴子は気合いを入れてペンを走らせた。
「6月21日 社長室の机の角に股を…何だか文章にするのって恥ずかしいわね。」
そうも言ってられない。冴子はさらにペンを走らせていった。 、