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妻を他人に
【熟女/人妻 官能小説】

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暗転-5

 ゆきの鼓動が激しくなる。
 夫はいつからボイスレコーダーを仕掛けていた? どこまで知っている?
 会話の中で、Yとの過去の不倫が知られている可能性がある。すでにZ、F、Yとアナルセックスしていることも。もし数ヶ月前から聞かれていたのなら行きずりの男と野外アナルセックスしたことも、夫に報告する前にFとデートしセックスしてしまったことも、夫が知るずっと前からZと不倫していたことも。知られてはいけないことが多すぎる。
 最近の夫の態度には何も変化はない。しかしあの夫のことだから興奮して自分を泳がせているだけ?

「Oくんは君のことが信頼できずにこんなことをしたんだろうか? こんなに仲のいい奥さんのことを」
 そうかもしれない。妻のことを信頼できず盗聴しようとする夫も夫なら、案の定夫への裏切り行為を繰り返していた自分も自分だ。心から愛し合っていると思っていた夫婦の関係が、にわかに脆弱で薄っぺらいものに感じられてきた。それはすべて、自らの過ちが招いたこと。私はいったい何をやっているのだろう。
 週刊誌事件がいちおうの収まりを見せ、ここしばらくは落ち着きを取り戻していたゆきの心に、再び動揺が走る。

  *

 Wのアドバイスを受け、ゆきはポーチを変えた。あえて前のものと同様、裏地があり細工がしやすいものに。
 女性がポーチを新調することは不自然ではないし、もしまたそこに細工をされたなら犯人を絞り込める。すなわち、夫以外が決してポーチに触れられないように管理を徹底し、帰宅後、就寝前、起床時などにはポーチに異変がないか確認する。
 数日後の朝、果たしてボイスレコーダーが仕込まれていた。寝る前には無かったものだ。ゆきは震える手で電源を切った。

「ボイスレコーダーを入れたのは……夫でした」

 出社後すぐWに報告する。
 様々な感情が溢れ俯くゆき。スカートに水滴がポタポタと溢れ落ち、染みを作った。
 夫がそのようなことをしていたのもショックだし、そんな夫をまったく責めれないほど裏切りを重ねていた自分も情けなかった。あげくに週刊誌に痴態を撮られ、Wに多大な迷惑をかけた。
 どうすればいいのだろう。夫の待つ家に帰るのが怖い。会社も辞められない。誰にも相談できない。他のことならいざしらず、事が事だけに友人にも親にも誰にも、もちろん夫にも相談できない。ゆきの周囲の人たちが、急に遠くに離れてしまった気がした。圧倒的孤独。すべては自分の撒いた種。

「Oさん、顔を上げて」
 見上げるとWが立っていた。いつもの、頼もしげな微笑みをたたえて。
「Oさんの気持ちは言わなくてもわかる……」

 その通りだと思った。今の自分の状況をすべて知るのは夫ではなくこの上司。Wはすべてをわかった上で、ゆきを責めるようなことはいっさい口にせず受け入れ支えてくれている。過去のいきさつから彼のことをはじめは警戒していたが、秘書課で一日中行動をともにしても異性としての下心を見せてくることもない。自分はWのことを少し誤解していたのかもしれないと、ゆきは思った。
 Wがゆきの背後にまわり、肩に手をかけた。大きくて、温かい手だった。

「泣いて気が済むなら思い切り泣けばいい。不倫してしまったのだってOさんなりに事情はあるんだろう。野暮なことは聞かないよ。夫婦関係だって色々だ。ままならないこともあるだろう」
「すみません……秘書課に来てからというもの、プライベートのことで何から何まで助けていただいて。本当に申し訳なく思っています……。ありがとうございます……」
「いいんだよ。私は何があってもOさんの味方だし、君が誰より頑張っているのを知っている」
「いえ……そんな……。また、泣いてしまうじゃないですか……」
 わずかに顔をあげ、自分の肩に手を置く男に向け小さく口元をほころばせるゆき。Wも笑ってくれた。
「私にはOさんが必要だ。済んだことは仕方がない。これからも私のことを支え、私の役に立ってほしい。期待しているよ」
「ありがとうございます……。いただいたご恩をお返しできるよう、Wさんのお役に立てるよう精一杯お支えします……」

 Wの役に立つ――。

 その言葉に隠された意味を、ゆきはまだ知らない。
 背後で、Wがにやりと悪魔の笑みを浮かべていることにも、気がついていない。


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