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先輩のセカンドバージンは僕のもの
【熟女/人妻 官能小説】

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(最終話)昔の男との邂逅C-3

「ーー倉田さん、中村さんと話したいって。無理だと思いますけどって言ったんだけど、引かなくて」

ボソッと耳打ちされる。

一応、理央には聞こえないように話してはいるが、明らかに倉田のことだとわかるだろう。

加奈子は立ち上がって、タイトスカートと揃いの、椅子にかけているグレーのジャケットを羽織ると、木綿子より前を歩き出した。
足早に部屋を出る。

部屋を出たすぐ側のところに、唇を一文字に結んだ倉田が、腕を組んで立っていた。

「あたしはあまり、話をしたい相手ではないのだけど。何か」

毅然とした態度に、倉田も言葉を詰まらせる。
木綿子も、ほんの少し遅れてかけつけた。

「あの、中村もこう言っておりますので、他の社員との接触は控えて頂けますと助かります。何があったか存じ上げませんが、会社の方に報告しますよ。困ります」

「中村さん、一度だけでいいんです。話が……したくて」

「あたしはしたくない。十年以上も前に会社をやめて、あなたとも別れたのに、何の話をするの。倉田さん、あたしより年上ですし、既婚ではないんですか。何にせよ、遠月さんの仕事を請け負うあなたが、誤解されるような行動をしないほうがいいと思いますけど」

「仕事もやめて、周りの社員も全く連絡先を知らなくてーー別れてから、ずっと気にかけていたんだ。気まずいのはわかるけど、仕事をやめるだけでなく、誰とも連絡を取れないようにして、姿を消すなんて。
僕は、恋愛以外の何かで、加奈子を傷つけるようなことをしたんじゃないのか。それなら誠心誠意、償いたい。僕は確かに結婚した。だけど、それとは関係ない。何かの理由で加奈子を苦しめたなら、謝りたいんだ。僕が加奈子との付き合いを解消したこと以上に、君を苦しめた何かがあるんじゃないのか。話をしたくないって、そういうことなんじゃないのか」

ーーそう。倉田はこういう人だ。優しい人なのだ。

だから、絶対に会いたくなかった。しかも既婚者であるならばーー

頭がクラクラする。
そして、涙が出てくる。
ーー自分の気持ちを隠し通すことに限界を迎えていた。

「倉田さんはそうやって、あたしの気持ちを考えてくれる。だから会いたくなかったの」

「ーー倉田さん、お引き取り願えますか。これ以上、うちの中村を責めるのはよして下さい、困ります」

「木綿子ちゃん、大丈夫。責められてない。ーー倉田さん。一度しか言わないから、その代わり、今後あたしと関わらないと約束してくれますか」

「わかった、約束する」

ああ、その言葉を言えば、倉田を傷つけてしまう。
そう思いながら加奈子は口を開いた。

「ダメです、中村さんーー」

加奈子が何を言うかをわかっているから、木綿子は止めようとする。
それを発露してしまえば、傷つくのは倉田だけではない。加奈子もだ。
加奈子が言う前に、木綿子も泣きそうな顔をしている。

「ーーあたし、今年十二歳になる息子がいるの」


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