side 詩織 11-1
石見家
詩織は家に入ると
台所で鍋をコンロの上に置いてから
ご飯を炊いて両親の帰りを待つのだった
しばらく携帯で今日撮った写真を眺めていると
砂織の声が聞こえてくる
「ただいま」
「あ おかえりなさい くみこちゃんちで
カレー作るの手伝ってごちそうになった」
「今日は草摩さんところにも行ったの?」
「うん 鍋に貰ったからそこに置いてある」
「橘さんといい草摩さんといい
お世話になりっぱなしで…お礼言わないとね
それで今日はおさむさんところにもいったんだよね」
「うん 行ってきて帰りにくみこちゃんちでカレー作り」
「そうなのね おさむくんは変わらない?」
「特に変わりはないよ あとあやさんにも会えた」
「あやさんというと…ゆきちゃんのお姉ちゃんで
春高バレーのあの子」
「うん プリンセス綾」
「詩織 ファンだったもんね」
「うん サイン貰ってきた」
「あらあら…綾さんもオフなのに」
「友達として付き合ってねと言われた」
「そりゃ、そうでしょ ファンとしてより」
「うん それにしてもかわいかった ゆきちゃんといい
姉妹揃って」
「そうね あの姉妹はかわいいよね
と言うか かわいい子ばかりだよね」
「ゆいちゃん ゆきちゃん くみこちゃん さゆりちゃん…」
「詩織もふくめて…おさむくんもこんなかわいい子ばかりに
関わって貰えて幸せだよね」
「お母さん わたしたちがどんなことしてるか
予想してるの?」
「うーん そうねぇ 食介とか
みんなこなしてるんだろうなぁっては思うけど
それ以外もしてるのかな?」
「ひみつ」
「言えないことしてるの? 気になるじゃない」
「だいじょうぶ 悪いことはしてないから」
「そ、そう…おさむさんを困らせたりしてないのかなぁ」
「それもないから」
「それならいいけど」
(えっちとかトイレ介助のことは言えないもん ごめんなさい)
詩織は心の中で母親に謝った
「あと 包丁の使い方とか
ゆいちゃんちとくみこちやんちで練習させてもらってるから
少しは上達してるとは思う」
「昨日今日と…頑張ってるよね 詩織」
「わたしが1番料理出来てないからね」
「他の4人は出来るのね」
「うん ゆいちゃんとくみこちゃんはとくに」
「小学5年生だから 焦らなくても 出来なくても普通だし」
「でも、出来るようになりたいし おさむくんに食べさせたいから」
「そっかぁ おさむさんのこと好きでしょ?」
「え? わかる?」
「そりゃ、わかるよ 歳の差とかいろいろあるけど」
「うん 色々あるから難しいのもわかる」
「親としては反対したくなる気持ちもあるけど
詩織が料理とかやる気になったきっかけだし
反対はしないから」
「ありがと」
「でも、ライバル多いでしょ?」
「それは うん」
「ゆいちゃんとくみこちゃんは強力なんじゃない?」
「やっぱりわかるのね」
「そりゃ、ふたりとも料理出来ていて
しかも体重を心配してやり出したんでしょ くみこちゃん」
「うん すごいよね」
「それだけ心配したわけだもんね おさむさんの体重」
「そう言うところもくみこちゃんはいい子だなぁって感じるし わたしも」
「そんな相手に負けたくないんだよね」
「出来たらね」
「忙しいけど出来るだけ料理は一緒にするね」
「うん ありがと」
「こうやって会話することもふえたし
わたしとしてもおさむさんに感謝かなぁ
忙しさにかこつけてほったらかしだったから 今まで」
「それは仕方ないよ 仕事」
「それでも…と思うもん
このままだと不良になったりしなかった?」
「うーん どうだろう 中学高校で遊んでばかりで
悪い友達増えたら可能性はあるよね」
「そうならないよね もう」
「うん 悪い友達と遊ぶよりはおさむくんのところで
おせわしてるほうがいいし」
「そっか 将来どうする予定?」
「まだ決めてない 10歳だよ まだ」
「あ そうね つい…」
「看護婦とかもありだし料理人もいいかな
まだ未定」
「まだ時間あるしね」
「うん 高校までに決める」
「そうだね」
こんな会話をしているうちに
7時を過ぎると詩織の父親も帰宅して
3人で夕ご飯を食べるのだった